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《高畑勲展─日本のアニメーションに遺したもの》東京国立近代美術館で開催中!

2019年07月30日

日本のアニメーション界を半世紀にわたって牽引し続けたアニメーション映画監督・高畑勲さん。

その業績を振り返る初の大規模回顧展が、千代田区の東京国立近代美術館にて開催中です。

高畑さんは1959年に東映動画(現・東映アニメーション)へ入社。TVアニメ「狼少年ケン」(63~65)で初めて演出を手がけ、『太陽の王子 ホルスの大冒険』(68)で劇場アニメ映画監督デビューを果たします。同僚だった宮崎駿さん、小田部羊一さんと共にAプロダクション、ズイヨー映像(のちの日本アニメーション)と移籍し、TVアニメ「アルプスの少女ハイジ」(74)、「母をたずねて三千里」(76)、「赤毛のアン」(79)などを演出・監督します。その後、スタジオジブリの設立に参加し、『火垂るの墓』(88)、『おもひでぽろぽろ』(91)、『かぐや姫の物語』(13)など数々の作品を監督。2018年4 月、惜しくも亡くなられました。

今回の展覧会では、高畑さんの関わった作品から1,000点を超える膨大な資料を展示。この中には、高畑さんの遺品から新たに発見された貴重な資料も含まれており、大きな注目を集めています。

会場は、高畑さんの仕事の流れに沿った4つのブロックで構成されています。

■第1章 出発点:アニメーション映画への情熱

最初のブロックは、キャリアをスタートさせた東映動画時代を紹介。

演出助手を務めた『安寿と厨子王丸』(61)、『わんぱく王子の大蛇退治』(63)、各話演出で参加した「狼少年ケン」(63~65)、劇場映画監督デビュー作となる『太陽の王子 ホルスの大冒険』(68)を中心とした作品資料が展示されています。

中でも注目なのは、入社直後の1960年前後に書かれた企画メモ「ぼくらのかぐや姫」。

当時の東映動画では、内田吐夢監督による『竹取物語』のアニメーション映画化が企画されており、社員全員から脚本プロット案を募るという画期的な試みが行われました。

このメモは、その時に書かれたものの一部と推定されており、「これがやがて高畑監督の遺作となった『かぐや姫の物語』(13)の制作に至ったのかもしれない」と、紹介されています。

『太陽の王子 ホルスの大冒険』 
©東映

劇場映画監督デビュー作『太陽の王子 ホルスの大冒険』も大きく取り上げられています。

作品制作にあたり、高畑さんは作品世界を構築するためにいくつもの資料を作成し、スタッフと共有しました。こちらでは、物語の進行に沿った登場人物のテンション・チャートや、ホルスとヒルダを主軸にした人間関係図表なども展示されています。これらの資料からは、高畑さんが演出に際し、登場人物たちの心情を緻密に構成していることが強く感じられます。

『太陽の王子 ホルスの大冒険』 
©東映

この他にもイメージスケッチや絵コンテ、原画やセル画など、多数の制作資料を見ることができます。

なお、練馬区立 石神井公園ふるさと文化館も、設定画や背景美術、セル画などの資料を提供しています。

『パンダコパンダ』『パンダコパンダ 雨ふりサーカスの巻』
@TMS

■第2章 日常生活のよろこび:アニメーションの新たな表現領域を開拓

続いてのブロックでは、東映動画から移籍後に手がけた1970年代の作品を紹介。

各作品のコーナーには、絵コンテや原画・動画などのほか、作品準備中に作られた資料も並びます。

アルプスの少女ハイジのジオラマ @ZUIYO
「アルプスの少女ハイジ」公式ホームページ http://heidi.ne.jp/

また、フォトスポットとして「アルプスの少女ハイジ」の舞台となるアルムの山の風景をモチーフとしたジオラマが作られています。

「赤毛のアン」
©NIPPON ANIMATION CO., LTD. “Anne of Green Gables” ™AGGLA

「赤毛のアン」のコーナーでは、高畑さんが準備の際にエピソードを正確な時系列に並べた表や、クラスメイトの名前と関係性を個別にまとめたリスト、英単語の和訳一覧などのメモやノートを見ることができます。

『じゃりン子チエ』 
©はるき悦巳/家内工業舎・TMS

■第3章 日本文化への眼差し:過去と現在との対話

高畑さんは、1981年公開の『じゃりン子チエ』、1982年公開の『セロ弾きのゴーシュ』以降、日本を舞台にした物語を描くようになります。1985年にはスタジオジブリの設立に参画。スタジオジブリは高畑さんの活動拠点にもなり、『火垂るの墓』(88)、『おもひでぽろぽろ』(91)、『平成狸合戦ぽんぽこ』(94)という、日本の現代史に注目した作品を手がけていきます。

『おもひでぽろぽろ』 
©1991 岡本 螢・刀根夕子・Studio Ghibli・NH

こちらのブロックでも、各作品の制作資料を展示。背景美術も数多く紹介されており、同じ美術監督(山本二三さん/『じゃりン子チエ』『火垂るの墓』、男鹿和雄さん/『おもひでぽろぽろ』『平成狸合戦ぽんぽこ』)でも、作品によって異なるアプローチで描かれていることがわかるように展示されています。

『平成狸合戦ぽんぽこ』 
©1994 畑事務所・Studio Ghibli・NH

『火垂るの墓』と『平成狸合戦ぽんぽこ』のコーナーには、作品準備中に描かれた大量のイメージボードも並んでおり、見どころの一つとなっています。

『ホーホケキョ となりの山田くん』 
©1999 いしいひさいち・畑事務所・Studio Ghibli・NHD

■第4章 スケッチの躍動:新たなアニメーションへの挑戦

1990年代の高畑さんは、作品制作の合間を利用して、日本の絵巻物を研究。1999年に「十二世紀のアニメーション ー国宝絵巻物に見る映画的・アニメ的なるものー」(徳間書店)を刊行します。それは高畑さん自身の、アニメーションの新しい表現スタイルの模索でもありました。その研究は、『ホーホケキョ となりの山田くん』(99)、そして最後の作品となる『かぐや姫の物語』(13)という作品で形になりました。

最後のブロックでは、この2作を取り上げています。

『かぐや姫の物語』
©2013 畑事務所・Studio Ghibli・NDHDMTK

『かぐや姫の物語』のコーナーでは大量の制作資料を展示。原画や美術ボードをはじめ、カメラワークの設計や着物の色のシミュレーションなども紹介されています。

また、高畑さんが大きな影響を受けたアニメーション作家 フレデリック・バックとの友情を紹介するコーナーも設けられています。

 

『かぐや姫の物語』
©2013 畑事務所・Studio Ghibli・NDHDMTK

『かぐや姫の物語』
©2013 畑事務所・Studio Ghibli・NDHDMTK

今回の展覧会では、俳優・中川大志さんによる音声ガイドも用意されています。

この音声ガイドには、高畑さんと共に作品制作に携わっていた、大塚康生さん、小田部羊一さん、友永和秀さん、男鹿和雄さん、山本二三さんのインタビューも収録されており、展覧会をより深く楽しめる内容になっています。(別途利用料がかかります)

物販コーナーでは、展覧会の図録をはじめとした展覧会限定グッズや、高畑監督作品関連グッズ等が販売されています。

アルプスの少女ハイジのアルムの山小屋 @ZUIYO
「アルプスの少女ハイジ」公式ホームページ http://heidi.ne.jp/

会場の外には、「アルプスの少女ハイジ」に登場するアルムの山小屋をイメージしたフォトスポットが作られています。

『太陽の王子 ホルスの大冒険』 
©東映

アニメーション映画監督・高畑勲さんの演出を1,000点を超える作品資料で振り返り、その作品世界の秘密に迫る大規模回顧展《高畑勲展─日本のアニメーションに遺したもの》は、東京国立近代美術館にて10月6日(日)まで開催中です。

《高畑勲展─日本のアニメーションに遺したもの》

会期/2019年10月6日(日)まで

会場/東京国立近代美術館 1階 企画展ギャラリー

開館時間/10:00~17:00(金、土曜日は21:00まで) ※入館は閉館30分前まで

休館日/月曜日、8月13日(火)、9月17日(火)、9月24日(火)

ただし8月12日(月・休)、9月16日(月・祝)、9月23日(月・祝)は開館

料金/一般 1500円、大学生 1100円、高校生 600円

※中学生以下および障害者手帳をお持ちの方とその付添者1名は無料


《高畑勲展─日本のアニメーションに遺したもの》公式サイト
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