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2015年08月14日

練馬区の新PRアニメ『タイムカプセル+』公開開始!宇田鋼之介監督インタビュー

練馬区の新PRアニメ『タイムカプセル+(プラス)』の公開を開始します。
この作品は各話約1分のショートアニメで、全4話で構成されています。練馬区各地の美しい風景をバックに、とある男女のさわやかで印象的な物語が展開されます。
今回公開されるのは第1話「夏」編です。毎年夏に石神井公園で実施される灯籠流しから物語は始まります。
是非ご覧になってみてください。

『タイムカプセル+』 #01 夏

この『タイムカプセル+』を監督したのは、東映アニメーションの宇田鋼之介監督です。宇田監督は、『ONE PIECE』*1『虹色ほたる~永遠の夏休み~』*2『マジンボーン』*3などの代表作のほか、数々の作品で活躍されています。
今回、『タイムカプセル+』の公開を記念して、宇田監督にお話をうかがいました。

宇田監督について

  • −−アニメーションを仕事にされたのは、なぜでしょうか?
  • 実は、高校生の頃は大学に進んで「歴史」を勉強したいと思っていたんです。でも、通っていたのが工業高校で、史学の大学に入るのが難しかったんですね。それでも受かった大学があったのですが、親とイロイロありまして。それで、他に何かないかと思って調べたんです。僕は映画が好きで、中学の頃から友達と8mmフィルムで自主製作の映画を撮ったりしていました。友達のお兄さんが、ZC1000という8mmカメラの名機を持っていたんです。だけど、実写映画の世界の大変さはなんとなく見聞きしていましたから、そちらは避けました。漫画も好きで同人誌みたいなものも作ったりしてたので、映画と漫画の中間だとアニメかな?って思ったんですね。『宇宙戦艦ヤマト』*4や『銀河鉄道999』*5も好きでしたし。それで、東京デザイン専門学校のアニメ学科に入ったんです。

  • −−影響を受けた作品はありますか?
  • 小学生の時に見た『スター・ウォーズ』*6は、映像に圧倒されました。それから『ジョーズ』*7ですね。台詞を全部憶えるほど影響されました。船の中で主人公たち3人が酒盛りをしているシーンでの人物の描き方が面白かったですね。みんな違う立場で最初は意見が合わず対立していたのが、目的の為に団結するんです。こういった人間関係の面白さに魅力を感じます。『羊たちの沈黙』*8もそうですね。自宅で見ていた時に、まだ幼かったうちの子供が横で一緒に見ていたんです。面会室のガラス越しのやり取りが面白かったみたいで。子供には難しい内容ですが、そういう所って子供にもちゃんと伝わるんです。子供向けの作品を作っても、「子供だましは作っちゃいけない」と思いました。
  • −−東映動画で仕事をするきっかけは?
  • 専門学校に入ってからアニメの作り方が分かって、仲間と一緒にアニメの自主制作なんかをしてたんです。その時に目をかけてくれていた技術講師の方がアニメの撮影会社に誘ってくれまして、デスク兼制作進行みたいな立場で仕事を始めました。しばらくして、東映動画で制作する『トランスフォーマー』*9に出向したんです。森下孝三*10さんに誘われて、東映動画で仕事を続けることになり、『聖闘士星矢』*11を手伝ったりしました。その後『悪魔くん』*12チームに移ったんですが、そこで師匠である佐藤順一*13さんに出会い、演出を勉強させてもらいました。『きんぎょ注意報』*14の2番目のエンディングで、初めて演出をしました。
  • −−その後TVシリーズ作品の演出、劇場作品の監督をされるようになりますが、実際にやってみてどのような感触をお持ちになったのでしょうか?
  • 「恥ずかしい」の一言でした。自分なら出来るだろうと思っていたんですが、出来ていなかった。編集や音楽のつけ方、アフレコの進め方など、イメージしていたビジョンが成立してないんです。映画が好きでたくさん見ていましたが、どう作るかという本質にたどり着いてなかったんです。悔しかったですね。でも、これでやめたら絶対に後悔する。だから「もっと良いものを作るんだ!」と思って今に至っています。
  • −−1999年から放送が始まった『ONE PIECE』では、1話〜278話までシリーズディレクターを担当され、劇場作品も2本(「デッドエンドの冒険(03)」「カラクリ城のメカ巨兵(06)」)監督されていますが、超人気漫画の原作を手がけるにあたり、大事にされたのはどのような点でしょうか?
  • 『ONE PIECE』のお話が来たのが自分の子供が生まれた日だったんですよ。1週間ほど待ってもらって、当時出ていた原作を全部読みました。超人気作ですのでプレッシャーはもちろんありましたが、「自分が間違わなければ大丈夫だろう」という判断もあったのでお受けしたんです。昔ながらの冒険活劇ということもあり、主題歌にもいろいろと注文を出しました。タイアップではなく聞いただけで『ONE PIECE』だってわかる作品専用の歌にして欲しい。タイトルを歌い上げる、賑やかな歌にしたい。ナレーションを入れるのでイントロを長くして欲しい。そしてやはり、子供が歌える歌にしてくださいと頼んだんです。作曲の田中公平*15さんや作詞の藤林聖子*16さんといろいろ話し合って出来上がったのが「ウィーアー!」でした。今でも愛される主題歌になってくれてとても嬉しいですね。僕は6年間とちょっとシリーズディレクターを務めたのですが、『ONE PIECE』のスタッフには一体感があり、みんなが同じ方向を向いて仕事ができたのがとても良かったです。スタッフが楽しんで作ったものは、見ているお客さんにも伝わると思います。
  • −−2012年に公開された『虹色ほたる〜永遠の夏休み〜』はとても話題になりました。
  • 100%東映アニメーションで作る、久しぶりのオリジナル作品をやろうという話がでて、この作品の原作が選ばれたんです。僕が監督に決まった時には、時間をかけて良いから納得の行くものを作ってくれと言われました。最初は、もっとライトなものを考えていたのですが、ダム問題や人の死などが関わるのをどう捉えるか、シナリオ作りに時間がかかりました。制作途中に東日本大震災が起きたのですが、原作者の川口雅幸さんが被災されて、1週間ほど連絡が取れなかったりもしました。あの震災は、作品にも影響しています。苦労して、自分の中でも変わって行った作品です。
  • −−この春に放送が終わった『マジンボーン』では、アニメプロジェクトin大泉でのトークイベントに、遠方からもファンがかけつけていました。この作品が人を引き付ける魅力について、どうお考えですか?
  • この作品では人間関係、特に親子関係をテーマにしていたんです。主人公の父親と母代りの姉。そして敵側の親子関係もある。更に敵側の宗教観のようなものも作りました。でも、「これはこう決まっています」というような答えは出していないんです。僕は作品を作るにあたり、見ている人に考える余地を与えるのも大事と思っています。作品を見て、「これはどうなっているんだろう?」って考えられるのは、ファンの特権ですから。

  • −−宇田監督の作品では、家族や仲間という人間関係を描かれていると指摘するファンもいらっしゃいます。このテーマについていかがお考えですか?
  • 『宇宙戦艦ヤマト』や『機動戦士ガンダム』*17が人気があるのは、敵側の事情や人間関係も描いているからだと思うんです。親子関係もそうですね。僕も子供が出来てわかるようになりました。立場が変わると考え方も変わりますから。あと、これは『ONE PIECE』の原作者・尾田栄一郎さんも言ってましたが、カッコイイ大人がいないとダメなんです。子供が子供だけの概念だけで突き進むのは、不自然なんですよ。若者の特権で進んでも良いんですけど、そこに導き手となる大人が存在しないといけないなと思っています。シャンクスとルフィの関係みたいな感じですね。

タイムカプセル+について

  • −−練馬区を舞台にした短編アニメ「タイムカプセル+」がいよいよ公開されます。この企画のどういう段階から参加されたのでしょうか?
  • 練馬アニメーションから東映アニメーションを通じて相談があり、適任だということで僕に声を掛けていただきました。『マジンボーン』で一番忙しかった時だったんですが(笑)でも、台詞無しでBGMのみ。四季をモチーフにしたドラマ。場所やプロットという基本設定までが決まっていたんです。すべて材料が用意されていてあとは自分でどう料理するか?という感じですね。これなら大丈夫だろうと考え、引き受けました。慣れ親しんだ練馬が舞台でしたので、選ばれていた場所については打合せの前に全部見てまわりました。

  • −−依頼を受けて、何を描こうと考えられたのでしょうか?
  • 「日常」を描こうと思いました。主人公たちのドラマも日常の中にある事なんですけど、そのバックにいる人達も、普通に動かしているんです。でも、主人公たちには反応しないんです。アニメだと主人公たちが何かやってると、後ろの人達が彼らを見るように描いちゃうんですけど、現実だと、カップルがいるからっていちいち見ないですよね(笑)そんな日常を描いています。ただ、台詞無しの怖さもありましたね。ストーリーはできるだけシンプルにしつつ、でも男の子と女の子の関係を「考える余地」を滑り込ませました。男の子の態度や女の子の反応などから、いろいろと想像してもらえると思います。あと、石神井公園の花火大会は、今は行われていないのですが、夏はやはり花火だろうということで、練馬区さんのOKをいただきました(笑)

  • −−この作品に登場する練馬区内の場所で、お気に入りの場所はありますか?
  • 練馬区庁舎の展望台ですね。レストランからの眺めがとても良いです。僕は沼津出身なので、富士山が見えるのも気に入っています。東京から見る富士山が好きなんですよ。それから、大泉学園の桜並木。桜の時期になると自転車でよく見に行きます。光が丘も気に入っています。練馬は都心と比べて、適度に自然や畑が残っているところが良いですね。とても落ち着きます。

  • −−最後に、これから『タイムカプセル+』を見る方へメッセージをお願いします。
  • 言葉に出来ない思いをフィルムに込めています。あなたの中の『タイムカプセル+』を見つけて下さい。
  • −−ありがとうございました。

*1 『ONE PIECE』
週刊少年ジャンプに連載中の、尾田栄一郎による同名マンガを原作としたアニメ。1999年10月から放送中。シャンクスは、主人公・ルフィが海賊に憧れるきっかけになった人物で、命の恩人でもある。

*2 『虹色ほたる〜永遠の夏休み〜』
2012年に公開されたアニメ映画。1977年にタイムスリップしてしまった少年・ユウタが、その夏を最後にダムに沈む村で不思議な体験をする感動ファンタジー。川口雅幸の同名小説が原作。

*3 『マジンボーン』
トレーディングカードゲームを中心とするクロスメディアコンテンツ。アニメ制作は東映アニメーションが担当した。アニメで描かれる個性豊かなボーンファイターたちは、男子のみならず多くの女性ファンも獲得。2014年4月から2015年3月までの1年間で52話が放送された。

*4 『宇宙戦艦ヤマト』
1974年に放送されたTVアニメ。77年には劇場公開され、アニメブームを巻き起こした。TV・映画で続編が作られた他、実写版や新作アニメとしてリメイクされている。

*5 『銀河鉄道999』
松本零士の漫画を原作としたアニメ。1978年から81年まで放送。劇場アニメ化もされている。宇田監督は、1998年に『銀河鉄道999 エターナル・ファンタジー』を手がけた。

*6 『スター・ウォーズ』
1977年に公開された、ジョージ・ルーカス監督のSF映画。世界的なSFブームを巻き起こし、スピンオフも含めたシリーズ化もされている。映画最新作は、2015年12月に公開予定。

*7 『ジョーズ』
1975年に公開された、スティーヴン・スピルバーグ監督による映画。ビーチの人々を襲う巨大人食い鮫に立ち向う男たちを描いた作品。スピルバーグの名を全世界に広めた一作。

*8 『羊たちの沈黙』
1991年に公開された、ジョナサン・デミ監督によるサスペンス映画。原作はトマス・ハリスの同名小説。主演はジョディ・フォスターとアンソニー・ホプキンス。アカデミー賞で主要5部門を受賞している。

*9 『トランスフォーマー』
元々はタカラトミー(旧株式会社タカラ)より発売されている変形ロボット玩具シリーズが『TRANSFORMERS』として北米を中心に大ヒットし、日本でも「トランスフォーマー」として展開。これを原作にしてアニメシリーズが作られており、宇田監督は『トランスフォーマー ザ☆ヘッドマスターズ』(87-88)、『トランスフォーマー 超神マスターフォース』(88-89)、『戦え!超ロボット生命体 トランスフォーマーV』(89)に演出助手・制作進行として参加している。

*10 森下 孝三 もりした こうぞう
アニメーションのプロデューサー、演出家で、現在は東映アニメーション取締役会長。『トランスフォーマー』シリーズや『聖闘士星矢』、『ドラゴンボール』等を担当した。

*11 『聖闘士星矢』
車田正美の同名漫画を原作としたTVアニメ。1986年10月から1989年4月まで全114話が放送された。映画やOVAも製作されている。

*12 『悪魔くん』
水木しげるの同名漫画を原作としたTVアニメ。1989年4月から1990年3月まで全42話が放送された。

*13 佐藤 順一 さとう じゅんいち
東映動画出身のアニメーション監督、演出家。代表作に『きんぎょ注意報!』、『美少女戦士セーラームーン』、『おジャ魔女どれみ』、『ケロロ軍曹』、『カレイドスター』、『たまゆら』等がある。

*14 『きんぎょ注意報』
猫部ねこの同名漫画を原作としたTVアニメ。1991年1月から1992年2月まで、全54回(108話)が放送された。宇田監督の初演出作品でもある。

*15 田中 公平 たなか こうへい
音楽プロダクション「イマジン」所属の作曲家、編曲家、歌手。アニメやゲームなどの楽曲を手がける。代表作に『トップをねらえ!』『絶対無敵ライジンオー』『サクラ大戦』『OVERMANキングゲイナー』等がある。

*16 藤林 聖子 ふじばやし しょうこ
オフィス・トゥー・ワン所属の作詞家。J-POPをはじめ、『ONE PIECE』や『マジンボーン』、『スーパー戦隊シリーズ』や『平成仮面ライダーシリーズ』等のアニメや特撮作品の主題歌・挿入歌を多数手掛けている。

*17 『機動戦士ガンダム』
富野喜幸(とみの よしゆき※現・富野 由悠季)監督のロボットアニメ。テレビシリーズアニメとして1979年から1980年まで全43話が放送された。戦争を舞台にした人間ドラマと、ロボットを兵器として扱う設定で「リアルロボットもの」の先駆けとなった。3部作の映画化の後シリーズ化され、現在も新作が作り続けられている。

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