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2014年08月08日

あしたのジョー、の時代展 若林覚館長特別インタビュー!!

「あしたのジョー、の時代展」は、作品に関わってきたすべての方々の協力によって実現しました。そしてそれを取りまとめたのが練馬区立美術館の若林覚館長と喜多学芸員でした。そこで若林館長に、同時代を生きた人間として、どういった思いで今回の企画展に取り組まれたのか、お話をうかがってきました!

  • --「あしたのジョー」、そしてその時代をテーマにしたのはなぜなのでしょうか。
  • まず、練馬区にいったいどんなマンガ家やアニメ関係者がいるだろうかと見渡してみました。するともちろん何人もいたのですが、ちばてつや先生は富士見台にお住まいで、この美術館のある中村橋のいわば隣町ですし、原作の高森朝雄(梶原一騎)先生も大泉で、このふたりのコンビネーションで「あしたのジョー」が生まれたとわかりました。つまりこの作品は練馬区が生誕地なんです。練馬区で生まれて練馬区で育っていったわけですから、やっぱりこの作品を取り上げるのがいいのではないかと思いました。
    それから「あしたのジョー」が講談社の週刊少年マガジンで連載されたのが1967年の暮れから73年ですよね。その時代というのは、混沌とした、しかしエネルギーに満ちた時代でした。学生運動が盛んでしたし、三億円事件が起きたり、大阪万博があったり。そしてよど号事件があって、田宮高麿が平壌に降り立つ直前に「我々はあしたのジョーである」というセリフを吐いてみたり。つまり社会の隅々まで「あしたのジョー」が行き渡っていたといえるんじゃないかと思うんですね。しかもそれだけではなくて、広告においても音楽においても演劇においても文学においても映画においても美術においても、さまざまなカルチャーとサブカルチャーの芽が出て花開いていく素地を作った時代じゃないかなと思うんです。だから、あの時代を総合文化的に検証することによって、いったいあの時代ってなんだったんだろうか、それが今日まで生きている意味ってなんだろうか、という問いかけをしてみたいなと思いました。
    また、まさに私自身があの世代なんです。なので、自分自身にも非常に熱い思いがあったといえます。そういう意味で、単なるマンガ展やアニメ展ではなくて、作品を起点にした総合的な展覧会ができる、という確信を得ました。これだったら美術館でやる意味があるなと。そうじゃなかったら百貨店の催事でいいわけですよね。以前に百貨店でも「あしたのジョー」の原画展をやっていらっしゃいましたけど、そういった一過性の催事を乗り越えて、アウフヘーベンして(注:止揚。古い概念に新しい概念を統合して高次に導くこと)さらに高いレベルを目指そうと。それこそが美術館でやる意味じゃないかと思ったわけです。

「力石徹告別式」チラシ 1970年 テラヤマ・ワールド蔵
©高森朝雄・ちばてつや/講談社

  • --本企画全体がそう言えると思うのですが、館長ご自身が特にここに時代の息吹感みたいなものを集約できたんじゃないか、と思ったところはありますか?
  • マンガとかアニメは、私が語るまでもなく当然だと思うんですど、やっぱり一連の寺山修司さんがらみの展示ですよね。寺山修司さんは「あしたのジョー」の大ファンで、ジョーの歌の作詞を手がけていたりもしますよね。「あしたのジョー」の作中で力石徹が亡くなったときに、告別式のプロデュースまでしたんですね。
    去年の暮れに寺山修司さんの奥様だった九條今日子さんにお会いしたんですよ。九條さんは、こういう展覧会をやるんだったらぜひ行きたいとおっしゃっていました。それで、実は力石徹の告別式を、寺山修司さんに「やりなさい」と裏でけしかけたのは私なのよと。そういう隠れた秘話がありまして。だから私はぜひ行きたいんだとのことでした。そうやって楽しみにしていらっしゃったんだけど、残念ながら4月にお亡くなりになりました。そういうこともあったので、一連の寺山修司さん関連のコーナーはぜひ見ていただきたいですね。
    さらに、なんとその告別式の祭壇まで展示室内で再現してしまいました。そこが大きな見どころですね。
    それともうひとつは、土方巽さんのあの「肉体の叛乱」の映像が再び観られるということ。これはたいへんなことですよ。これはぜひ観ていただきたい。あと、芸術家の秋山祐徳太子さんが、当時いろんなことをやっていたんですよね。作品はあの時代あまり作っていなくて、ご本人はむしろ活動そのものが芸術だとおっしゃっていました。当時は反万博運動をやってみたり、グリコの格好をしてみたり、そういうパフォーマンスで有名でした。ブリキ板を使っていろいろな作品を造り出すのはそれ以降なんですね。秋山祐徳太子さんがらみの展示も見ものです。
    それからさらに言うなら、今回の最大の呼び物というのは、現代アートの最前線で活躍している作家たち、浅葉克己さんや及川正通さんといったアートディレクターやイラストレーターなどが「あしたのジョー」のオマージュ作品をオリジナルでつくったことです。彼らは団塊の世代とそのちょっと上の世代なんです。彼らが自分にとって「あしたのジョー」っていったい何だったんだろう、と自分自身に対する問いかけをして、作品としてああいう形で世に問うてみようと。これもすごいことだと思います。これも、彼らが所属している日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)の協力を得られたからできたことです。あのコーナーは非常におもしろい。
    それから最後に観ていただきたいのは、しりあがり寿さんの作品。彼が展示室のひと部屋を使って自分のアートを精一杯つくっている。しりあがりさんはみなさんマンガ家だと思っていらっしゃると思うけど、実は現代アーティストでもあります。おもしろい現代アートをたくさんつくっている。今回彼はあそこで、ジョーと力石の対決を自分なりのゆるキャラ、ゆるメーションで再現しています。展示室の床にいろいろな置物がおいてあるでしょう? 日用雑貨品みたいなもの。あれは全部声を出しているんです。みんな「あしたのジョー」の歌を歌ってるんですよ。これはしりあがり寿さんにとって、大変なオマージュ作品だろうと思います。
  • --「あしたのジョー」と館長の関わりをうかがいたいのですが、当時大学生だったと思いますが、マンガは読んでいらっしゃいましたか?
  • 読んでいましたよ。それほど熱心な読者ではありませんでしたけどね。「あしたのジョー」から何を学んだかというと反骨心ですよね。あるいは挑戦する心。あの時代はみんなそうだったと思うのですが、体制に抗う気概ですね。私もそうでしたけど、当時は「右手に少年マガジン、左手に朝日ジャーナル」。そういう時代でしたからね。
  • --今回企画展をやるにあたって、アニメをご覧になったりとかマンガを読み直したりは?
  • しましたよ。やっぱり体制や強いものに抗う姿勢、打たれても打たれても立ち上がって、立ち向かっていく力、そういうのは今でも十分通用するし、むしろ今の若い人たちに大いに感じてほしいなと思いますね。

    それからおもしろいと思った場外エピソードがもうひとつあって、実はあの大文豪の三島由紀夫さんが、隠れたる「あしたのジョー」の大ファンだったんですよね。「あしたのジョー」を連載している週刊少年マガジンを発売当日に買いそびれてしまい、深夜に講談社の編集部を訪ねたそうなんです。コンビニのない時代ですからね。翌朝まで待てなかった。それくらい大ファンであったというんですね。それからしばらくして彼は割腹自殺してしまう。こういうエピソードは興味深いですよね。
  • --アニメファンに向けてこの企画展のアピール、あるいは館長からのメッセージをお願いします。
  • アニメそのものは、虫プロがつくった第一シリーズのサマリー以外はそれほど大きく取り扱ってはいませんが、アニメ化されるに至った源流みたいなもの、精神構造みたいなものは大いに取り上げているので、それを今回の展示でしっかりじっくりつかんでいただいて、もう一回アニメを観てもらえるといいのではないかと。そうすることによって、アニメの深さや新鮮さなどをさらに深く味わっていただけるんじゃないかと思います。
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