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練馬ほっと・キャスト 特別企画 練馬にいた! アニメの巨人たち

練馬区ゆかりのアニメクリエイターと、その作品の魅力を探る練馬アニメーションサイト新企画「練馬にいた!アニメの巨人たち」。
アニメ研究家の氷川竜介さんとアニメ史研究家の原口正宏さんが、そのクリエイターの魅力についてたっぷり語ります。

  • アニメ研究家 氷川竜介さん
  • アニメ史研究家 原口正宏さん

第3回 片渕須直さん(アニメーション映画監督)その3

  • 片渕須直さん(アニメーション映画監督)
  • ©こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

第3回も引き続き、アニメーション映画監督の片渕須直さんを取り上げます。
第1回はこちら
第2回はこちら
片渕須直監督は、現在も大ヒット上映中の映画『この世界の片隅に』の監督です。片渕さんは練馬区にある日本大学芸術学部の出身で、現在も同校の講師として後進の指導にもあたられています。

片渕須直監督プロフィール

アニメーション映画監督。1960年生まれ。日大芸術学部映画学科在学中から宮崎駿監督作品「名探偵ホームズ」に脚本家として参加。『魔女の宅急便』(89/宮崎駿監督)では演出補を務めた。T Vシリーズ「名犬ラッシー」(96)で監督デビュー。その後、長編『アリーテ姫』(01)を監督。TVシリーズ「BLACK LAGOON」(06)の監督・シリーズ構成・脚本。2009年には昭和30年代の山口県防府市に暮らす少女・新子の物語を描いた『マイマイ新子と千年の魔法』を監督。口コミで評判が広がり、異例のロングラン上映とアンコール上映を達成した。またNHKの復興支援ソング『花は咲く』のアニメ版(13/キャラクターデザイン:こうの史代)の監督も務めている。

※以下の画像と解説をご覧になりながらお聞きください。
また、今回の内容には、紹介する作品のネタバレも含みます。ご注意ください。

収録のようすと用語解説

名探偵ホームズ」に参加
■ 「名探偵ホームズ」

コナン・ドイルの小説「シャーロック・ホームズ」シリーズを原作にしたTVアニメ。イタリアのテレビ局RAIと東京ムービー新社の合作で、制作開始当初は宮崎駿氏が監督として準備を進めていた。
Blu-ray BOX 発売中
発売・販売元:バンダイビジュアル
©RAI·TMS
http://www.bandaivisual.co.jp/

■ 「青い紅玉(ルビー)」「海底の財宝」
いずれもTVアニメ「名探偵ホームズ」のエピソードで「青い紅玉」は第5話、「海底の財宝」は第9話として放送されたが、これに先立ち『風の谷のナウシカ』の併映作品として劇場で公開されている。主人公ホームズ役、ヒロインのハドソン婦人の声がTVシリーズと異なる。片渕氏はこの2篇のほか第4話「ミセス・ハドソン人質事件」、第10話「ドーバー海峡の大空中戦!」の計4話分の脚本を担当。いずれも宮崎駿監督が演出。
■ ポリィ
「名探偵ホームズ 青い紅玉」に登場する子どものスリ。男の子に見えるが実は女の子。
■ 宮崎 駿(みやざき はやお)
アニメーション映画監督。1963年東映動画(現・東映アニメーション)へ入社。1971年に高畑勲氏、小田部羊一氏と共にAプロダクションに移籍、『パンダコパンダ』(72)に参加する。ズイヨー映像(のちの日本アニメーション)に移籍後は、「アルプスの少女ハイジ」(74)全カットの場面設定・画面構成を担当。「未来少年コナン」(78)でTVシリーズを初監督。テレコム・アニメーションフィルムに移籍し、『ルパン三世 カリオストロの城』(79)で長篇映画監督デビューを果たす。その後、『風の谷のナウシカ』(84)を経て1985年にスタジオジブリを設立し、多数の作品を監督・プロデュースする。2001年に公開された監督作品『千と千尋の神隠し』は、興行収入300億円を超え、日本歴代興行収入第1位を達成。2017年現在もこの記録は破られていない。
■ 東映動画(現・東映アニメーション)
1956年に練馬区大泉に設立された、60年の歴史を持つアニメーション制作会社。当初の制作体制は、「動きで表現することを大事にする」ことを特徴とした劇場作品を、1年間に1本のペースで製作・公開することを目標としていた。1963年からはTVアニメの制作もスタート。以降現在に至るまで、「ドラゴンボール」シリーズ、「デジモンシリーズ」、「ONE PIECEシリーズ」、「プリキュア」シリーズなど、数多くの劇場作品、TVシリーズを発表し続けている。その設立から初期のスタッフについては、当サイト《練馬のアニメスタジオの遺伝子 東映動画編》で詳しく紹介。
■  高畑 勲(たかはた いさお)
アニメーション映画監督。1959年に東映動画(現・東映アニメーション)へ入社。池田宏は同期入社。TVアニメ「狼少年ケン」(63)で初めて演出を手がけ、『太陽の王子 ホルスの大冒険』(68)で劇場アニメ映画監督デビューを果たす。同僚だった宮崎駿氏とAプロダクション、ズイヨー映像(のちの日本アニメーション)と移籍し、TVアニメ「アルプスの少女ハイジ」〈74〉、「母をたずねて三千里」(76)、「赤毛のアン」(79)などを演出・監督する。その後、スタジオジブリの設立に参加する。
■ 『わんぱく王子の大蛇(おろち)退治』
東映動画(現・東映アニメーション)が制作した1963年公開の劇場用アニメ映画。大塚康生氏(後述)と月岡貞夫氏(後述)が半年かけて作画した、天早駒(アメノハヤコマ)にまたがるスサノオと八叉の大蛇の空中戦は300カット・動画1万枚を超えており、日本アニメーション史上に残る名場面として高く評価されている。監督:芹川有吾、作画監督:森康二。
■ 「未来少年コナン」
日本アニメーションが制作した、1978年放送のTVアニメ。宮崎駿監督のTVアニメ初監督作品。最終戦争後の荒廃した地球を舞台に、恐れを知らない野生児コナンが、謎の少女ラナを守るために戦う胸躍る冒険アドベンチャー。少女を助けに向かう少年の姿、様々な飛行メカ、異変を予知する虫の大群等、その後の宮崎作品『ルパン三世 カリオストロの城』(79)、『風の谷のナウシカ』(84)、『天空の城ラピュタ』(86)などへと受け継がれた要素も多い。また、絵コンテで高畑勲氏や富野由悠季氏(とみの喜幸名義)も参加している。本作に影響を受けたアニメ・クリエイターも多く、片渕須直氏もその一人。原作:アレグサンダー=ケイ「残された人びと」、監督:宮崎駿、作画監督:大塚康生。
■ 大塚 康生(おおつか やすお)
日本アニメーション創成期から第一線で活躍するアニメーター・作画監督。東映動画、Aプロダクション、日本アニメーション、テレコム・アニメーション・フィルムの各社で数々の名作を手がけた。代表作は『太陽の王子ホルスの大冒険』(68)、「ルパン三世(1stTVシリーズ)」(71~72)、「未来少年コナン(TV)」(78)、『ルパン三世 カリオストロの城』(79)など。
■ 月岡 貞夫(つきおか さだお)
アニメーション作家。高校卒業後、マンガ家・手塚治虫のアシスタントとなる。手塚氏の意向で東映動画(現・東映アニメーション)のアニメ映画『西遊記』(60)の制作に参加。この間に東映動画に入社する。自らが企画したTVアニメ「狼少年ケン」(63~65)の放送初期には、演出・原画・動画まですべて一人でこなすという「天才アニメーター」ぶりを発揮した。その後東映動画を退社し、虫プロで「W3(ワンダースリー)」(65)や「悟空の大冒険」(67)などに関わった。日本大学芸術学部の映画学科の講師も務めた。
■ 日本大学芸術学部
通称「日藝」。映画・アニメ・放送・写真・芸能の分野に、たくさんの著名人を輩出している。アニメでは、池田宏氏、富野由悠季氏、石黒昇氏、佐藤順一氏などの出身校として知られる。片渕須直監督の在学時のアニメーションの授業は、担当講師が池田宏氏、月岡貞夫氏だった。練馬区の江古田にあるキャンパスは昭和14年に開かれており、「江古田」といえば「日藝」と言われるほど、その存在は地域のランドマークとして広く知られている。
■ テレコム
テレコム・アニメーションフィルムのこと。海外との合作のためフルアニメーションを描けるアニメーター育成を目的に、当時の東京ムービー社長・藤岡豊氏が1975年に創設したスタジオ。『リトル・ニモ』(後年、『NEMO/ニモ』として公開)制作のためにスタッフが集められ、その準備期間中にディズニー、ワーナー・ブラザース、フィルメーションなどアメリカのプロダクションの外注を引き受け、フルアニメーションの技術を習熟していった。また、1979年には『ルパン三世 カリオストロの城』、1980年代~90年代前半には「名探偵ホームズ」「じゃりン子チエ」などのアニメーション制作も行っている。1988年に『NEMO/ニモ』完成後、アメリカの作品を多く手掛け、1997年には「アニマニアクス」(93~98)で、翌98年には「バットマン」(92~99)でエミー賞を受賞。現在は『LUPIN THE ⅢRD 血煙の石川五エ門 』など、主に国内作品を手掛ている。
■ 友永 和秀(ともなが かずひで)
タイガープロ、OH!プロダクションなどを経て、現在もテレコム・アニメーションフィルムに在籍する超ベテランアニメーター。「マジンガーZ」(72~74)から現在に至るまで、数々の作品で原画を担当。「宇宙戦艦ヤマト」(74~75)の七色星団決戦や、『ルパン三世 カリオストロの城』(79)のフィアットの崖のぼりなどは、現在でも高く評価されている。ルパン三世PARTⅣ (15~16)では、総監督・絵コンテ・演出を務めた。
「リトル・ニモ」のアニメ化にも関わっており、1984年にパイロット版を近藤喜文氏(こんどう よしふみ 故人)と共同監督した。この時に片渕須直氏も演出補佐として参加している。
■ 『ルパン三世 カリオストロの城』
1979年公開の劇場用アニメ映画。アニメ化された「ルパン三世」の劇場映画第2作目にして、宮崎駿監督の映画初監督作品。東京ムービー新社(現、トムス・エンタテインメント)が制作、アニメーション制作はテレコム・アニメーションフィルムが担当した。原作:モンキー・パンチ、監督:宮崎駿、作画監督:大塚康生。
片渕監督の特徴を強く感じられる作品は?
■ 『アリーテ姫』
STUDIO 4℃が制作した、2001年公開の劇場用アニメ映画。片渕須直監督の、長篇映画監督デビュー作。城の塔の中で育てられたアリーテ姫と、彼女を連れ去る魔法使い・ボックスの物語。想像力を働かせる少女が主役という点で、後の『マイマイ新子と千年の魔法』や『この世界の片隅に』にも繋がりを感じられる。2000年の東京国際ファンタスティック映画祭ではじめて上映された。原作:ダイアナ・コールス、監督・脚本:片渕須直
■ 『マイマイ新子と千年の魔法』

片渕監督の長篇アニメーション2作目。2009年公開。芥川賞作家・髙樹のぶ子の自伝的小説「マイマイ新子」が原作。昭和30年の山口県防府市を舞台に、空想好きで多感な少女・新子の日常を、東京から来た転校生・貴伊子や仲間たちとの交友を軸に描く。『この世界の片隅に』と共通する部分も多く、片渕監督自身が〈姉妹作〉と語っている。『この世界の片隅に』の大ヒットを受け、各地で再上映が行われている。
DVD&Blu-ray発売中
発売・販売元:エイベックス・ピクチャーズ
©髙樹のぶ子・マガジンハウス/「マイマイ新子」製作委員会
http://www.mai-mai.jp/discography/

■ スタジオジブリ
『天空の城ラピュタ』製作時の1985年に、『風の谷のナウシカ』を製作した出版社・徳間書店が中心となり設立したアニメーション・スタジオ。以後、宮崎駿・高畑勲両監督の劇場用アニメ映画を中心に製作してきた。当初は作品ごとにスタッフを集め、完成と共に解散する従来の制作会社のスタイルだったが、後に人材育成のためにアニメーターを正社員化・固定給制にするなど、高品質で安定した作品作りの拠点となった。
■ STUDIO 4℃
『となりのトトロ』『魔女の宅急便』(宮崎駿監督)のラインプロデューサーを務めた田中栄子氏が主宰する、アニメーションをはじめとする映像作品制作会社。劇場用アニメ映画では、『スプリガン』(98)、『アリーテ姫』(01)、『ベルセルク 黄金時代篇』三部作(12)などの代表作がある。1995年に公開された『MEMORIES』の1篇である、「大砲の街」(大友克洋監督)の制作には、技術設計として片渕須直氏も参加している。
■ 世界名作劇場
かつて日本アニメーションが制作していたテレビアニメシリーズの呼称。世界中で親しまれてきた小説・童話などを原作として、ファミリー向けに脚色をしてアニメ化されている。〈世界名作劇場〉という表記になったのは1979年放送の「赤毛のアン」からで、それまでは〈カルピスこども劇場〉や〈カルピスファミリー劇場〉という表記だった。
■ 虫プロ
虫プロダクションの通称。マンガ家でアニメーターでもあった手塚治虫が設立し、1961~73年まで活動したアニメスタジオ「株式会社虫プロダクション」(旧)と、1977年に旧虫プロの労働組合を母体として設立された「虫プロダクション株式会社」(新)がある。
虫プロダクション(旧)には、芦田豊雄氏、杉井ギサブロー氏、川尻善昭氏、高橋良輔氏、出崎統氏、富野由悠季氏、丸山正雄氏、安彦良和氏、吉川惣司氏などが在籍していた。当サイト《練馬のアニメスタジオの遺伝子 虫プロダクション編》でも詳しく紹介。
■ 『うしろの正面だあれ』
虫プロダクション(新)が制作し、1991年に公開された劇場用アニメ映画。落語の林屋一門のおかみさんとして知られる海老名香葉子氏が、太平洋戦争中の自身の体験を綴った同名小説が原作。画面構成として、片渕須直氏が参加している。原作:海老名香葉子、監督:有原誠治、作画監督:小野隆哉、画面構成:片渕須直
■ 「ワンダービートS(スクランブル)」
手塚治虫が企画監修、虫プロダクション(新)が制作した、1986年に放送されたTVアニメ。人体の神秘をテーマにしたSF作品。監督:出崎哲(1〜15話)有原誠治(16〜26話)、演出チーフ:有原誠治(1〜15話)・冨永恒雄(1〜15話)片渕須直(16〜26話)
■ 丸山 正雄(まるやま まさお)
アニメーションプロデューサー。日本のアニメ業界の黎明期から活躍している。1965年に虫プロダクション(旧)に入社。1970年にはTVアニメ「あしたのジョー」を世に送り出した。1972年にマッドハウスを設立。数々のTVアニメやOVAを手がけた。劇場映画では、今敏監督の全作品『PERFECT BLUE』(97)、『千年女優』(02)、『東京ゴッドファーザーズ』(03)、『パプリカ』(06)を企画・プロデュース。2006年には細田守監督の『時をかける少女』をプロデュースし、次作『サマーウォーズ』も担当する。片渕須直監督作品『マイマイ新子と千年の魔法』、『この世界の片隅に』にも、企画として立ち上げから携わった。現在はMAPPA代表取締役会長、スタジオM2代表取締役社長を務める。最新作は池波正太郎の時代小説「鬼平犯科帳」シリーズをTVアニメ化した「鬼平」(17 放送中)。
■ レイアウト(画面構成)
日本のアニメ制作の工程の1つ。絵コンテから1カットの完成画面を想定し、背景の構図とキャラクターの動きや配置を決定してより緻密に描かれた〈設計図〉となるものをレイアウト(画面構成)という。この、レイアウト基本にしてアニメを制作することを、〈レイアウトシステム〉と呼ぶ。日本で初めて本格的にレイアウトシステムで作られたのは、1974年放送の「アルプスの少女ハイジ」といわれており、宮崎駿氏が全カットのレイアウトを担当した。
■ 出﨑さん
アニメ監督・出﨑 統(でざき おさむ)氏のこと。虫プロダクションでアニメーションのキャリアをスタートし、1970年にTVアニメ「あしたのジョー」でチーフディレクター(監督)デビュー。その後、自らも設立に参加した「マッドハウス」に拠点を移し、数多くの作品を手がけた。止め画、繰り返しショット、画面分割などの〈出﨑演出〉と呼ばれる独創的な技法を編み出し、「エースをねらえ!」(73~74)、「ガンバの冒険」(75)、「宝島」(78~79)、「あしたのジョー2」(80~81)などの作品で、見る者に強烈なインパクトを残した。
当サイトの《練馬アニメカーニバル2015 レポート》内で、原口氏が「ガンバの冒険」と出﨑監督について語っている。
■ 杉井さん
アニメーター、アニメ監督の杉井 ギサブロー(すぎい ぎさぶろー)氏のこと。1958年に東映動画に入社。大塚康生の元で、アニメーターとして『白蛇伝』に参加。後に虫プロダクションに移籍し『鉄腕アトム』で演出も手掛ける。1969年にグループ・タックを設立。総監督を務めたTVアニメ『タッチ』は大ヒットした。
■ マッドハウス
1972年に、虫プロダクション(旧)に所属していた丸山正雄氏、出崎統氏、りんたろう氏、川尻善昭氏などが中心となって設立したアニメスタジオ。当初は、東映動画のテレビシリーズや、東京ムービーのテレビシリーズなどのアニメーション制作を行っていた。80年代には映画やOVAなども手掛けるようになる。TVアニメ「YAWARA!」(89~92)を皮切りに自社制作も行うようになった。TVアニメ「カードキャプターさくら」(89)、「はじめの一歩」(00~02)、「四畳半神話大系」(10)や、劇場用アニメ映画『千年女優』(02)、『時をかける少女』(06)、『マイマイ新子と千年の魔法』など、高い品質を誇る作品を数多く作り出している。
■ MAPPA
2011年にマッドハウスを退職した丸山正雄氏が、70歳にして設立したアニメスタジオ。設立当初から『この世界の片隅に』の制作ルームが置かれ、アニメーション制作も担当した。TVアニメ「坂道のアポロン」(12)、「はじめの一歩 Rising」(13~14)、「残響のテロル」(14)、「DAYS」(16)など、話題作も次々と発表している。
■ 細田さん
アニメーター・アニメ監督の細田 守(ほそだ まもる)氏のこと。1991年に東映動画(現・東映アニメーション)に入社し、アニメーターとしてキャリアをスタートさせる。1996年に社内で演出採用試験が初めて実施されこれに合格。翌年、TVアニメ「ゲゲゲの鬼太郎(第4シリーズ)」(96~98)で演出家としてデビューした。1999年には短編アニメ映画『劇場版デジモンアドベンチャー』の監督に抜擢、2000年の『劇場版デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』で注目を集めた。東映アニメーションを退社後フリーとなり、丸山正雄氏の勧めにより『時をかける少女』(06)を監督し大ヒット。国内外の映画・アニメ賞など23冠を受賞した。2011年にアニメーション映画制作会社〈スタジオ地図〉を設立。『おおかみこどもの雨と雪』(11)、『バケモノの子』(15)とヒット作を生み出し続けている。
片渕監督の演出のポイント
■ 「BLACK LAGOON」(ブラック・ラグーン)
東南アジアの架空の都市・ロアナプラを舞台に、荒事を請け負う運び屋〈ラグーン商会〉と、裏社会に属する組織や人物たちが繰り広げるドラマを描いた作品。漫画家・広江礼威(ひろえ れい)氏により、『月刊サンデージェネックス』(小学館)2001年4月号にて読み切りとして発表された。その後、2002年5月号より同誌にて連載開始。片渕須直監督によりTVアニメ化され、2006年に第1期・第2期計24話が放送された。2010年にはアニメ第3期としてOVA「BLACK LAGOON Roberta’s Blood Trail」(全5巻)も制作された。
■ Uボート
ドイツ語で潜水艦を表すUnterseeboot(ウンターゼーボート 〈水の下の船〉の意)の略語。たが、「Uボート」という呼称は、第一次世界大戦、第二次世界大戦で活動したドイツ海軍の潜水艦の代名詞となっている。「BLACK LAGOON」TVシリーズ第4話〈Die Rückkehr des Adlers〉の冒頭に登場するのは、第二次大戦期のUボートVIIC型。
■ 「名犬ラッシー」

日本アニメーションが制作し、1996年1月から同年8月まで《世界名作劇場》枠で放映されたTVアニメ。片渕須直氏の初監督作品。1930年代イギリスにある炭鉱町を舞台に、少年ジョンとコリー犬・ラッシ-の生活をメインに据えたストーリーになっている。原作:エリク・ナイト(「名犬ラッシー」より)、キャラクターデザイン:森川聡子、監督:片渕須直
DVD全6巻 発売中
発売・販売元:バンダイビジュアル
©NIPPON ANIMATION CO.,LTD.  “Lassie”©Classic Media, Inc. LASSIE is a registered trademark of Classic Media, Inc. All rights reserved.
http://www.bandaivisual.co.jp/

■ 「嵐の中をかけぬけろ」
「名犬ラッシー」第6話。嵐の中をジョンとラッシーが届け物をするシーンは、こうの史代先生の「カッパのねね子」にも影響をあたえた。
■「はじめてのケーキ作り」
「名犬ラッシー」第10話。鉱山主のラドリング公爵の孫・プリシラと、牧場の娘・サンディ、ジョンの3人でシフォンケーキを作る話。
■ ヨークシャー
イギリスを構成する4国の一つ、イングランドの北部にある地方。「名犬ラッシー」の舞台であるグリノール・ブリッジは、ヨークシャーにある炭鉱町の設定。
■ かなとこ雲
積乱雲の形態の一つ。その形状が金属加工などで用いる金床(かなとこ)に似ていることからこう呼ばれている。『この世界の片隅に』のあるシーンで登場する。
■ かっぱのねね子
福音館書店刊行の絵本雑誌「おおきなポケット」(2001~2002年。現在休刊中)に連載された、こうの史代先生のマンガ。カッパの女の子・ねね子の暮らしを描く。単行本化はされていない。

第4回につづく(片渕監督篇・最終回)

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