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2015年04月03日

アニメ映画『この世界の片隅に』制作支援メンバー募集に大反響! 片渕須直監督 特別インタビュー!

日本大学芸術学部出身で、練馬アニメカーニバルでもおなじみの片渕須直監督が、漫画家・こうの史代先生*1の代表作『この世界の片隅に』*2のアニメ化に向けて準備を始めて4年。
シナリオ・絵コンテが完成したところまで辿り着きました。
そしてこの度、本格的な制作をスタートするにあたり、一般に向けて、制作支援メンバー募集という形でクラウドファンディング*3が始まりました。
反響は大きく、開始2時間で支援者・120人、支援額200万円を超え、日本国内の映画ジャンルのクラウドファンディング史上最速とも言われました。インタビューを行った16日16時には支援者・1500人超、支援額・1800万円超が集まっています。
今回は、片渕監督が『この世界の片隅に』の制作をされているスタジオにお邪魔し、クラウドファンディングの反響や作品への思い、原作者・こうの史代先生のお話などを聞かせていただきました。

クラウドファンディングの反響

  • −−この反響の大きさについて、どのように感じていらっしゃいますか?
  • 短期間でここまで来たのは本当にありがたいですね。
    『この世界の片隅に』をアニメーションにするぞ!』と動き出した時の我々の気持ちと、映画業界の受け止め方が違ったようなので、この作品がどれくらい支持されているのかを、明確に示した方が良いと思ったんです。その方が、映画を実現しやすくなると。それで、クラウドファンディングということになりました。
    始めてみると、予想以上の勢いで驚きました。志を持ったたくさんの方々から、密度の高い熱のこもった応援を頂けて、この作品に対する期待の大きさを示せていると思います。
    こうの先生の作品を愛読されている方は、まだまだたくさんいらっしゃると思いますので、これからもたくさんのお声をいただけるとありがたいですね。

  • −−コメントページを見ると、こうの先生の原作ファン、『マイマイ新子と千年の魔法』*4の片渕監督ファン、舞台である広島の方がたからのコメントが多いように見受けられます。
  • 『この世界の片隅に』は、読んだ人がいろんな見かたができる物語です。いろんな側面を複雑に持った原作だからこそ、様々な方向からの応援という形として表れているんじゃないかなと思います。
  • 『マイマイ新子と千年の魔法』の防府もそうでしたけども、自分にとって広島は縁のない土地だったんです。なので、始める時には勇気がいるんです。
    「たいへんな調べ物をした」っていわれていますが、広島という町を理解したくて調べたところもたくさんあります。ですので、広島の方から応援していただけるのは嬉しいですね。

原作について

  • −−原作漫画を読んだのは、何かきっかけがあったのでしょうか。
  • 『マイマイ新子と千年の魔法』のファンの皆さんや、舞台になった防府市の方と交流している時に、複数の方から勧められたんですよ。次は是非この作品を作って下さいって。それで初めて手に取りました。
    『マイマイ新子と千年の魔法』は、どこを観ても泣けると、いろんな人にいわれましたけど、作っている自分ではその感覚がわからなかったのですが、『この世界の片隅に』を読んだ時に、その感覚を理解できました。

©こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

  • −−最初にお読みになった印象は覚えていらっしゃいますか。
  • 平成20年8月が『マイマイ新子と千年の魔法』の原画アップ目標でしたが、実際に完成したのが平成21年の8月。
    昭和20年8月の終戦を過ぎても、時間が流れている物語が、自分の身の上と重なって、すごくリアルだったんです。
    今までやっていた作業はここで終わりじゃない。毎日は続くのだ!って。
    戦争のという時代の中で行われる、普通の生活。戦争が単純な悲劇ではなく、その先も生きていかなければならない。ということを示してくれていて。すずさんたちの姿にすごく勇気づけられました。
    明日もあるのだ!ってね(笑)
  • −−片渕監督が『この世界の片隅に』をアニメ化したいと考えたポイントは?
  • 以前から普通の生活の機微が面白いと思っているのですが、現在のアニメーションを取り巻く環境では、普通の生活を描くというのは実は難しいのです。『マイマイ新子と千年の魔法』は、山口県出身のプロデューサーの粘りと頑張りもあって、久しぶりに描けたんですけど。
    『この世界の片隅に』を読んでみると、呉軍港という日本海軍の根拠地*5の目の前で行われる、日常の生活という対局の存在が描かれているんです。
    戦争という存在があるからこそ、普通の生活が色濃く際立って見える。自分の描きたいのはまさにこれだ!と感じました。

「調べる」ことの大切さ

©こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

  • --作品創作において、「調べる」ということをどのように感じていらっしゃいますか。
  • こうの先生はこの作品を描くにあたって、本当に良く調べられているんです。
    例えば「19年4月」の回で、戦艦大和*6が入港するシーン。
    昭和19年4月に大和が呉に入港したのは、17日だけなんです。そこまで調べて、こうの先生は描いている。
    これを映像化する為に、今度は僕が4月17日の事を調べました。
    大和は瀬戸内海での試験航行の後、夕方に入港している。天候は春霞がかかっているが視界は良く、麗らかな1日だった。
    そんな日の夕方に、すずさんと周作さんは肩を並べて大和を見てたんだなというのがわかりました。

©こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

  • 場所や土地、事象など調べたことを取り入れていく事で、実際の場所と作品が地続きになる。リアリティを追求することで、画面の外にある景色や風景まで無限に広がっていく。観ていただいた方に、そんなふうに感じてもらえると良いなと思います。

アニメーション化への動き

  • −−「この世界の片隅に」をアニメ化されるにあたり、どのような動きをされたのですか?
  • こうの先生に連絡を取りたくて、双葉社さんに話したら、担当の方が『マイマイ新子と千年の魔法』を観てくれていて、社内に働きかけて下さいました。 そんな経緯で、こうの先生には双葉社さん経由で企画書と『マイマイ新子と千年の魔法』のDVDを送ったんです。そうしたら、こうの先生から「『名犬ラッシー』*7のファンでした!」とお返事をいただいて。嬉しかったですね。

こうの史代先生と、『この世界の片隅に』

  • --こうの先生と最初にお会いになった時、どのようなお話になったのでしょうか。
  • すでに呉に行って下調べをしていたので、地図を広げてずっと呉の話をしていました(笑)。わからなかった場所を聞いたりして。そこが自分たちが調べた場所からわずか10数mの場所だったのを聞いて、すぐに日帰りで確認に行きました(笑)

  • --こうの先生の大事な作品をお預かりすることについて、どのようにお感じなっていらっしゃいますでしょうか。
  • 『この世界の片隅に』は、こうの史代先生が渾身で描いた、まさに代表作です。
    そしてこの素晴らしい作品は、自分でアニメーション映画にしたいと思いました。
    ですから、すごい責任とプレッシャーがありますね。
    作品を損なわないようにと思っています。
    同時に、自分が良いなと思った所は曲げないと決めています。
    そこは自分だけが分かっててもダメですので、スタッフにも説明して理解してもらった上で、制作に取り組んでいきたいです。

©こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

  • 戦争という時代の中でも、すずさんは日々普通に生きていて、見ている僕らはそこがたまらなく愛おしい。その1日1日が輝いている。
    アニメーションにすることで、その大切さをすずさんに教えてあげられるのかもしれないなって、思っています。
  • --ありがとうございました。

※制作支援メンバー募集(クラウドファンディング)は、3月18日(水)午前2時50分に、1685人の支援者と、当初目標額の2000万円が集まりました。引き続き、5月29日の期間終了まで継続されています。
『この世界の片隅に』公式サイト http://www.konosekai.jp/

片渕須直(かたぶち すなお)

1960(昭和35)年生まれ。日本大学芸術学部在学中に、大学の特別講義が縁で宮崎駿監督作品に参加。以後スタジオジブリ、テレコム・アニメーションフィルム、虫プロなどに参加。ジブリ作品『魔女の宅急便』演出補、虫プロ作品『うしろの正面だあれ』画面構成を手掛けた。1996(平成8)年にはTVアニメ『名犬ラッシー』を監督。STUDIO 4℃の設立に参画し、劇場初監督作品『アリーテ姫』を制作。その後マッドハウスで制作した監督作『マイマイ新子と千年の魔法』が異例のロングラン上映を果たし大きな話題になる。現在はMAPPAで『この世界の片隅に』を制作中。
NHK東日本大震災復興応援プロジェクトのテーマソング『花は咲く』のアニメーションでは、こうの史代先生にキャラクターデザインを依頼した。不定期ではあるが、今も放送されている。

*1 こうの史代(こうの ふみよ)
マンガ家、イラストレーター。広島県出身。1995(平成7)年『街角花だより』でデビュー。『夕凪の街 桜の国』で手塚治虫文化賞新生賞、文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞。映画化もされた。主な著作は『長い道』、『ぴっぴら帳』、『こっこさん』、『さんさん録』『ぼおるぺん古事記』『日の鳥』『荒神絵巻』など。児童書から青年誌まで幅広く活躍している。

*2 『この世界の片隅に』
昭和19年~21年の広島・呉を舞台に、絵を描く事が好きな少女・すずが送る戦争と隣り合わせの日常を、丁寧に、丹念に描いたこうの史代先生の代表作。文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。

*3 クラウドファンディング
特定のプロジェクトまたはベンチャーなどの資金調達をするために、インターネットを利用し、多くの人々から寄付や投資を集めること。

*4 『マイマイ新子と千年の魔法』
直木賞作家・髙木のぶ子の著書『マイマイ新子』を原作に、片渕監督がアニメ化した2009年公開の映画。制作はマッドハウス。

*5 日本海軍の根拠地
呉軍港では、海軍所属艦艇の統率・補給・出動準備、兵員の徴募・訓練、施設の運営・監督などが行われていた。

*6 戦艦 大和
呉で建造され、1941(昭和16)年12月に就役した世界最大の戦艦。1945(昭和20)年4月の坊ノ岬沖海戦で戦没した。先日発見された武蔵は同型艦である。

*7 『名犬ラッシー』
1996(平成8)年に放送されたTVアニメ。エリック・ナイトの児童文学が原作。1930年代中頃のイギリス・ヨークシャー州の小さな村を舞台に、少年ジョンと、仔犬のラッシーの生活を描く。片渕監督の初監督作品。制作は日本アニメーション。

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