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《第21回文化庁メディア芸術祭 受賞作品展》国立新美術館で開催中!

2018年06月15日

今回で21回目となる《文化庁メディア芸術祭》の受賞作品展が、港区の国立新美術館で開催中です。

アート、エンターテインメント、アニメーション、マンガの4部門において、優れた作品を顕彰し、受賞作品の鑑賞機会を提供することを目的とした、メディア芸術の総合フェスティバルとして平成9年度から毎年行われています。

6月12日には開催に先駆け、内覧会が行われました。

今回は、世界98の国と地域から4,192点に及ぶ作品の応募がありました。

厳正な審査で大賞に選ばれたのは以下の作品です。

左から、竹内 オサムさん、田宮 俊作さん、片渕 須直さん、上田 文人さん、Haythem ZAKARIA さん

■アート部門

 『Interstices / Opus I – Opus II』(映像インスタレーション)

 Haythem ZAKARIA さん[チュニジア]

 

■エンターテインメント部門

 『人喰いの大鷲トリコ』(ゲーム)

 『人喰いの大鷲トリコ』開発チーム(代表:上田 文人さん)[日本]

 

■アニメーション部門

 『この世界の片隅に』(劇場アニメーション)

 片渕 須直さん [日本]

 

 『夜明け告げるルーのうた』(劇場アニメーション)

 湯浅 政明さん [日本]

 

■マンガ部門

 『ねぇ、ママ』

 池辺 葵さん [日本]

 

そして、日本のメディア芸術界に大きく貢献した方に贈られる功労賞には、

 

■実業家

 田宮 俊作さん(株式会社タミヤ 代表取締役会長・社長)

 

■マンガ研究者/同志社大学教授/マンガ家

 竹内 オサムさん

 

のお2人が選ばれました。

受賞作品展の会場は、アート部門、エンターテインメント部門、アニメーション部門、マンガ部門の4つのブロックに分かれ、大賞、優秀賞、新人賞などの作品170点以上を紹介しています。

◇アニメーション部門

今回のアニメーション部門は、『この世界の片隅に』と『夜明け告げるルーのうた』が大賞をW受賞しました。

 

内覧会では、『この世界の片隅に』展示スペースで、片渕須直監督自らが展示について解説しました。

 

〈年代別人物スケッチ〉

「今回展示してもらっているのは、映画を作るにあたって、どんな風に自分たちが考えてきたかがわかるような物です。

ここにあるのは、2011年くらいに我々スタッフが作った、映画の中の時代の人々のスケッチです。

戦争中と言っても、何年何月で人の装いは違うし、考えている事も思っている事も違う。そういうものが移ろいでゆく様、時代の流れそのものを映像にしていけるだろうか?というアプローチです」

〈北條家と生活のスケッチ〉

「映画の中では、1人の18歳の主婦の生活が描かれています。その生活のディテールはどうだったのだろうな? どんな家に住んでいて、その家には何があったんだろうな? ということも考えました」

〈広島市中島本町 大津屋モスリン堂の作画の変遷〉

「それから、彼女が訪れる1軒のお店。これは広島に実在し、原爆で無くなってしまった「大津屋モスリン堂」というお店なのですが写真が残ってない。でも何とかして描きたいと思い、調べ続けた過程も展示しています」

「このお店については、最終的には映画を観たお店のお孫さんが訪ねて来てくださって、お店で使われていた包み紙を1枚戴くことができました。

『この世界の片隅に』は、そういうところまで繋がっています。

我々は街をただ描いたのではなく、“そこにあった街”を描きました。そして、その街に関わっていた人、繋がりのある人がこの作品を観て、いろんな想いを抱いてくださったわけです。

そんなふうに、たくさんの広島市や呉市の風景なども、同じように描いています。

 

今回の展示を見ることで、映画をご覧になって感じていただいた世界を、新しくふくらませていただけるのではないかと思います。

そういうところに、期待して来ていただけると嬉しいです」

『夜明け告げるルーのうた』の展示スペースでは、海外出張中の湯浅政明監督の代理で、岡安由夏プロデューサーが挨拶。

「今回の展示に関しましては、湯浅監督のイメージボードと、ねむようこ先生による手描きのキャラクター原案を中心に構成いただきました。

制作を開始した当初、湯浅監督のこれまでの作品よりも柔らかいタッチを取り入れたいと思い、少女マンガ家である、ねむ先生にキャラクター原案をお願いしました。」

「実際に制作が進むと、絵柄以上の科学反応が、お二人の間で起こりました。

例えば、水をジェルのように表現した湯浅監督のイメージボードに応える形で、ねむ先生から〈ルー〉のキャラクター原案が上がって来ました。

ねむ先生からは、〈ルー〉の髪型自体が水のジェルのような形になっており、その中で魚を飼っているというアイデアをいただきました。

湯浅監督は後に、《このアイデアは自分では決して思い浮かばなかった》とおっしゃっています。

 

ここに展示したイメージボードとキャラクター原案から、お二人の制作過程の熱いセッションを感じていただければ幸いです。

また、3つのTVモニターに流れるのは、本作の特徴でもあるFlashでの制作工程を追ったものになっています。こちらもお楽しみいただければ幸いです」

と、今回の展示についての解説を行いました。

アニメーション部門の展示コーナーでは、各受賞作品の制作資料や紹介映像などが展示されています。

 

■アニメーション部門 受賞作品

《大賞》

『この世界の片隅に』(劇場アニメーション)片渕 須直 さん [日本]

『夜明け告げるルーのうた』(劇場アニメーション)湯浅 政明 さん [日本]

 

《優秀賞》

『ハルモニア』feat. Makoto(短編アニメーション)大谷 たらふ さん[日本]

『COCOLORS』(オリジナルビデオアニメーション)『COCOLORS』制作チーム(代表:横嶋 俊久 さん) [日本]

『Negative Space』(短編アニメーション)KUWAHATA Ruさん / Max PORTERさん [日本/米国]

 

《新人賞》

『舟を編む』(テレビアニメーション)黒柳 トシマサ さん [日本]

『The First Thunder』(短編アニメーション)Anastasia MELIKHOVAさん [ロシア]

『Yin』(短編アニメーション)Nicolas FONGさん [フランス]

 

※アニメーション部門 受賞作品一覧はこちらから

 

◇マンガ部門

大賞を受賞した池辺葵さんの作品『ねぇ、ママ』は、実際の家族としての母だけでなく、修道士、家政婦、旅先で出会った老姉妹、近所のおばあさん、ママになることに憧れる少女など、誰かの「母」的な存在となる人物をモチーフにした7つの物語が収録された短編集です。

作品紹介スペースには、直筆原画や受賞記念イラスト等が展示されています。

内覧会では、池辺さんからのメッセージが読み上げられました。

「『ねえ、ママ』は、2014年から2017年にかけて、ゆっくり描かせていただいた短編集です。

当時すでに『プリンセスメゾン』を連載していたので、『ねえ、ママ』も『雑草たちよ 大樹を抱け』も、締め切りに追われることが無いよう編集者の方たちが配慮してくださいました。

カバーデザインは、いつもデザイナーさんがラフからつかまえて下さいます。

サイン本をたくさん描かせていただいて、地味な作品なのに販売にも力を入れてくださいました。

傲慢なことに、いつも一人で描いているようなつもりでいますが、本を〈売り〉、〈作る〉という意味では、なにも労苦しておりません。マンガを描くことだけに集中できる環境をいただいています。

携わってくださった皆さんに支えられて、戴けた賞です。

この賞を戴くにふさわしい実力をつけていけるよう、今後も精進したいと思います。

このような機会を設けてくださっていること、嬉しくありがたく思います。

スタッフ、皆さまに、感謝いたします」

優秀賞を受賞した上野顕太郎さんの『夜の眼は千でございます』は、1998年より『月刊コミックビーム』(KADOKAWA)で連載されている同誌最長連載のギャグ読切シリーズの単行本化作品第5弾。

会場には、かの名作『あしたのジョー』を題材に、高座の噺家の語りをそのままマンガにした〈落語マンガ〉や、さまざまな芸術家の画風で描いた〈アートな交通標識〉などの原稿が展示されています。

内覧会では、来場されていた上野さんからの挨拶がありました。

 

「この度は、かつてない栄誉をいただきましてありがとうございます。

ギャグマンガというのはストーリーマンガと違って、こういう華やかな席でスポットライトが当たることは少ないです。私は以前から、ギャグマンガとしての賞も設立していただけないかと思っています。今後に続く新人たちや、ずっとギャグを描き続けているベテランの方々にも、スポットライトを当てていただければなと願っています。

関係各位、妻をはじめ、担当さんや編集部の皆さんには、地味なギャグマンガを続けさせていただいて、本当にありがたいと思っています」

マンガ部門の展示コーナーでは、各作品の原画や設定資料、受賞記念のイラストなどが展示されているほか、受賞作品・審査委員会推薦作品の全巻を自由に閲覧できる〈マンガライブラリー〉も設置されています。

■マンガ部門 受賞作品

《大賞》

『ねぇ、ママ』池辺 葵さん [日本]

 

《優秀賞》

『銃座のウルナ』伊図 透さん [日本]

『ニュクスの角灯』高浜 寛さん [日本]

『夜の眼は千でございます』上野 顕太郎さん [日本]

『AIの遺電子』山田 胡瓜 [日本]

 

《新人賞》

『甘木唯子のツノと愛』久野 遥子さん [日本]

『バクちゃん』(ウェブマンガ)増村 十七さん [日本]

『BEASTARS』板垣 巴留さん [日本]

 

※マンガ部門 受賞作品一覧はこちらから

◇アート部門

アート部門の大賞は、チュニジアのHaythem ZAKARIAさんの作品『Interstices / Opus I – Opus II』。

砂漠の風景を捉えた静的な『Opus I』と、海の風景を捉えた動的な『Opus II』で構成された映像インスタレーション作品です。

アート部門は大型作品の展示も多く、一部の体験型作品を楽しむことも可能です。

 

■アート部門 受賞作品

《大賞》

『Interstices / Opus I – Opus II』(映像インスタレーション)Haythem ZAKARIAさん [チュニジア]

 

《優秀賞》

『アバターズ』(メディアインスタレーション)菅野 創さん/やんツーさん [日本]

『進化する恋人たちの社会における高速伝記』(メディアインスタレーション)畒見 達夫さん/ダニエル・ビシグさん [日本/スイス]

『水準原点』(映像作品)折笠 良さん [日本]

『Language Producing Factory』(映像インスタレーション)DAI Furenさん [中国]

 

《新人賞》

『I’m In The Computer Memory!』(メディアインスタレーション)会田 寅次郎さん [日本]

『Panderer (Seventeen Seconds)』(映像作品)Gary SETZERさん [米国]

『The Dither is Naked』(ネットアート)YANOさん [スイス]

 

※アート部門 受賞作品一覧はこちらから

◇エンターテインメント部門

エンターテインメント部門の大賞は、アドベンチャーゲーム『人喰いの大鷲トリコ』。

『ICO』(2001)や『ワンダと巨像』(05)といったPlayStation®2を代表するゲームを手がけ、国内外に熱心なファンを持つ上田文人さんが、監督とゲームデザインを担当した作品です。

内田さんからは「この『人喰いの大鷲トリコ』に少しでも触れていただいて、ビデオゲームの可能性を感じていただけたら嬉しいです」と挨拶がありました。

 

こちらのスペースには、大型スクリーンに投影された、AI技術によって動く実物大の「大鷲トリコ」も登場。ゲームの中のように触れ合うことができるような展示が行われています。

 

このほか、エンターテインメント部門は体験型の展示が多いのも特徴になっています。

■エンターテインメント部門 受賞作品

《大賞》

『人喰いの大鷲トリコ』(ゲーム)『人喰いの大鷲トリコ』開発チーム(代表:上田 文人さん) [日本]

 

《優秀賞》

『FORESTA LUMINA』(空間表現)『FORESTA LUMINA』 制作チーム [カナダ]

『INDUSTRIAL JP』(映像・音響作品)INDUSTRIAL JP [日本]

『PaintsChainer』(ウェブ)米辻 泰山さん [日本]

『Pechat』(ガジェット)『Pechat』開発チーム(代表::小野 直紀) [日本]

 

《新人賞》

『盲目の魚-The Blind Fish-』(映像・音響作品)石川 泰昭さん/ミカヅキ フタツさん/Keishi Kondoさん [日本]

『Dust』(空間表現)Mária JÚDOVÁさん / Andrej BOLESLAVSKÝさん [スロバキア]

『MetaLimbs』(ガジェット)佐々木 智也さん/MHD Yamen SARAIJIさん [日本/シリア]

 

※エンターテインメント部門 受賞作品一覧はこちらから

 

◇功労賞

会場の中央では、功労賞受賞者を紹介する展示が行われています。

 

日本のプラモデルの草創期から、業界を牽引してきた株式会社タミヤ代表取締役会長・社長を務める田宮俊作さんを紹介するスペースでは、同社を代表するプラモデルをはじめとした製品や、その時代を代表するイラストレーターを起用して話題となったボックスアートの数々を紹介しています。

内覧会では、田宮俊作さんが挨拶しました。

 

「タミヤではもともとソリッドモデル(主に木材を使用した模型)を作っていましたが、外国からプラモデルが入って来るようになって、プラモデルに転換しました。その時に外国製品のコピーをしなかったのが結果的に良かった。戦車でも飛行機でも、実物を見ないとプラモデルにしなかったんです。ですので、うちの模型が非常に正確だと有名になりました。

電動ラジコンカーもタミヤが流行のきっかけを作りました。それを子どものために手軽に作れるようにしたのがミニ四駆です。ミニ四駆は、東南アジアやサウジアラビア、ドバイなどでは「ものづくり」のお手本となっています。

そういうことで、今、タミヤの向かう方向は、教育的に『ためになるようなものを作ろう』ということになっています。

模型というものは、ものづくりの基本となって発達していくのではないかと考えています」

マンガ研究者として受賞した竹内オサムさんからも、挨拶がありました。

 

「私は40年くらい前からマンガ研究を始めました。当時は大人がマンガを読むこと自体が、非常に奇異に見られた時代で、学生がマンガを読んでいただけで新聞沙汰になったほどです。そんな時代でしたから、なかなか「マンガを研究している」とは言えませんでした。2001年にマンガ学会が出来て、それ以降は社会的にも認知されるようになってきました。

私の活動の中心は、手塚治虫さんの研究です。特に昭和20年代、30年代の初期の活動に興味があり、研究を続けて来ました。

もう一つは、日本でマンガ研究をきちんとした形で起こそうという願いを持っていましたので、マンガの年表や文献目録、マンガを教える為のテキストなどを作って来ました。

私はまだ20年くらいは生きれると思いますので、マンガ研究の基礎的なところを作っていって、若手に負けないよう頑張りたいと思います」

 

※功労賞の紹介ページはこちらから

今回の展覧会では、一部を除いて撮影が可能です。

《第21回 文化庁メディア芸術祭 受賞作品展》は、国立新美術館で6月24日(日)まで開催中。

周辺の施設でも関連イベントを展開しています。(詳細は公式サイトをご覧ください)

《第21回 文化庁メディア芸術祭 受賞作品展》公式ページ

《第21回 文化庁メディア芸術祭 受賞作品展》

会場:国立新美術館(東京都港区六本木7-22-2)

会期:6月24日(日)まで

開館時間:10:00~18:00 ※金・土曜日は20:00まで

     ※入場は閉館の30分前まで

観覧料:無料


《第21回 文化庁メディア芸術祭 受賞作品展》公式ページ
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