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2016年07月13日

「しりあがり寿の現代美術 回・転・展」練馬区立美術館で開催中!

漫画家・しりあがり寿先生がこれまでに発表してきた多様な漫画作品をはじめ、アニメーション作品や回転インスタレーションなどを展示する美術展「しりあがり寿の現代美術 回・転・展」が、練馬区立美術館で開催中です。

「弥次喜多 in DEEP」や「地球防衛家のヒトビト」など、独特の批評精神に満ちたギャグ漫画で知られる漫画家・しりあがり寿先生。その作品は文藝春秋漫画賞や手塚治虫文化賞・優秀賞を受賞するなど高い評価を得ており、2014年の春の叙勲では、紫綬褒章を受章されました。最近では、東日本大震災後の日本をテーマにした漫画集「あの日からのマンガ」が大きな話題となりました。また日本大学芸術学部や神戸芸術工科大学では、長年に渡り学生の指導にあたっています。

その一方で、墨絵やアニメーションなどの手法を用いて、自身の漫画と関連しながらもそれ自体で自律した現代アート作品も発表。近年では、様々なものを回転させる一連のインスタレーション作品も制作しています。 今回の展覧会は、これまでに発表された多様な仕事を紹介しつつ、回転インスタレーションを中心とした新作を展開。絵画作品やジオラマ、日用品から映像まで、あらゆるものが展示室内で回転する、新しい「しりあがり寿ワールド」を体感できる展覧会です。

開催前日の7月2日、オープニングセレモニーと内覧会が実施されました。
しあがり寿先生は「目の回るような忙しさの中、目の回るような展覧会に来ていただいてありがとうございます。この展示では、600から700くらい回転しています。これだけあると止まってるものもあったりしますが、そこはご容赦下さい。全部いっぺんに回ったら、何かが起きるなと思います(笑)
『おまえはなんで色んなところで回転させているんだ』と聞かれる度に、適当な事を答えて来たのですが、そこはみなさんで想像して下さい。回転は本当に魅力がありますので、それぞれが『回転って何だろう?』と考える機会になると思います。ぜひ、回転を楽しんでください」と挨拶しました。

セレモニーの最後には、本展の閉館アナウンスを担当する俳優の宮崎叶夢さんが、「回・転・展」にちなみ、シャンソンの名曲「私の回転木馬」の替え歌を歌いながら登場。来賓や出席者を巻き込みながらの熱唱に、どよめきが上がりました。

第1章 マンガなど

■マンガの代表作原画エリア
展示の最初は、しりあがり寿先生の多彩な作品の中から漫画作品を紹介するエリア。
こちらにはデビュー単行本「エレキな春」や、実写映画の原作にもなった「真夜中の弥次さん喜多さん」「弥次喜多 in DEEP」、現在連載中の「地球防衛家のヒトビト」をはじめ、数々の漫画原稿や、近年に制作されたイラストレーションなど直筆原画約50点が公開されています。

■墨絵エリア
しりあがり寿先生は、1980年代の漫画作品から墨絵を用いています。1994年に初めて作品として発表し、2004年からは部屋全面に和紙を貼った墨絵インスタレーションなどを各地で行なって来ました。今回は2015年に行われた展示『崩と回』から『崩』の部分を展示。展示スペースに大きく貼り出された作品は迫力満点です。

■ ゆるめ~しょんエリア
しりあがり寿先生が2006年より取り組んでいるのが、ロトスコープ(実写で撮影した動画をもとにアニメーションとして描き起こす)などによる【ゆるいアニメーション(=ゆるめ~しょん)】。大小様々な液晶モニターを使い、約60点が並びます。
2014年にフランス・パリで開催された葛飾北斎の展覧会「Hokusai」の為に制作した<Voyage de HOKUSAI 北斎の旅>も公開。この作品で北斎の声を務めたのが、本展のオープニングセレモニーに登場した宮崎吐夢さんです。エリック・サティの名曲「ジュ・トゥ・ヴ」を口ずさみながら「富嶽三十六景」の世界を軽やかに旅する北斎の旅をゆるめ~しょんで表現した本作は、ゆるさとギャグ、そして感動が詰まった不思議な味わいを持っています。

第2章 回転作品

そしていよいよ回転作品のエリアです。
展示会場に入ると、しりあがり寿先生による【回転宣言】が目に入ります。
以下に全文を掲載します。

回転宣言

ヤカンが静かに回り出す
ゆっくりゆっくりくるりくるり
その姿はこのうえなく美しい
しかし回りだした瞬間、それはもう元のヤカンではない
水も汲めない、湯も沸かせない、ただ静かに存在感を放つだけの金属だ
そんな機能も目的も失ったヤカンの存在を許す場所はどこだろう
それは台所でも食堂でも金物屋でもショーウィンドウでもない
そう、それは美術館
故にヤカンは回って芸術となった
思えば回転は人類の始まりから
否この世界の成り立ちから我々と共にあり
大きく回り小さく回り
存在の根源を仄めかし、現れる諸相を巻き込み
いまや直線的な歴史の放棄を迫られた人類に
回転にこそ、その未来があるのだと覚醒を促す
素粒子が回り、銀河が回り、歴史が回り、我々も回る グルグルグルグルグールグル♪
回れ回れ、回転に幸あれ!

2016年7月 しりあがり寿

■回るヤカン
【回転宣言】の向かいには、今回のコンセプトをヤカンで表現した、本展の象徴的作品<回るヤカン>が展示されています。
回転するヤカンを見て何を感じるのか。是非ご自分で体感してみてください。

■回転派
こちらは2013年に発表された<回転派のアトリエ>と、2015年の<回転派の静物画>を組み合わせたコーナーです。イーゼルに載せられたキャンバス、壁にかけられた静物画、デッサン用の石膏像や鳥かご、新聞紙、本、花瓶など、アトリエ内のあらゆるものが回転しています。日常ではありえない体験に頭がクラクラしそうですが、ついつい見入ってしまう不思議な空間です。
■まわる歴史
続いては<まわる歴史博物館>。縄文人の親子、前方後円墳、西郷隆盛と勝海舟の江戸城開城会談、太平洋戦争の日本艦隊などを題材に制作された回転インスタレーションの展示が行われています。会場に設置されているTVモニターでは、日本の歴史の名場面を紹介するアニメーション作品『まわる歴史』を上映。聖徳太子や源平合戦、大政奉還など、歴史の転換点となった場面が描かれています。こうした作品を見ると、改めて歴史は回るものであると感じずにはいられません。

■ダルマ
グルグル回る順路案内に惑わせられながら進む先に現れるのは、<回転体は行進するダルマの夢を視る>と名付けられた2014年発表の作品。12体のダルマが並び、「おれは強いんだぞー」と歌いながら、その場でグルグルと回転しています。「偉そうに強がってはいるけれど、自分の周りしか見ていない」という揶揄を込めたというダルマたちの動きは必見です。

■回る白昼夢
先へ進むと、約600点の物体が静かに回り続けるスペースが広がります。伝票やCD、ティッシュペーパーやトイレットペーパー、タバコ、薬、カップ麺、下着や靴下など、日常に存在するあらゆるものが回転しています。この空間は白を基調にしていることもあり、正に白昼夢の様相を呈しています。
■回転道場
しりあがり寿先生が扮する老師と、回転の極意を学ぼうとする弟子たちのエンドレスな日常を描く短編映画<回転道場>の上映も行われています。延々とループするドラマの中に起きるわずかな変化に、目が離せなくなる不思議な作品になっています。
■ピリオド
展示の最後は、<ピリオド>と名付けられた作品。
こちらはぜひ、会場で体験してみて下さい。
会場では、この展覧会の図録「しりあがり寿の現代美術 回・転・界」も販売されています。
各展示の説明だけではなく、描き下ろしの漫画やインタビュー、対談なども収録。展覧会をより深く楽しめる1冊になっています。

会期中にはワークショップやギャラリートーク、声優・銀河万丈さんによる読み語りなどの関連イベントも行われる予定です。
※詳細は、練馬区立美術館公式サイトをご覧ください。
漫画家しりあがり寿先生の自身初となる美術館での展覧会「しりあがり寿の現代美術 回・転・展」は、練馬区立美術館で9月4日(日)まで開催中です。

しりあがり寿の現代美術 回・転・展

【会期】平成28年9月4日(日)まで
【会場】練馬区立美術館
【休館日】月曜日(ただし、7月18日(月・祝)は開館。翌19日(火)は休館)
【開館時間】午前10時〜午後6時※入館は午後5時30分まで
【観覧料】一般800円、高大学生及び65〜74歳600円、中学生以下及び75歳以上無料(無料、割引対象者は年齢等の確認の出来る物をお持ちください。)
練馬区立美術館 公式サイト
「しりあがり寿の現代美術 回・転・展」 特設サイト
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