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2014年07月04日

「あしたのジョー、の時代展」開催記念 ちばてつや先生特別インタビュー!

「あしたのジョー」や「あした天気になあれ」など、人気マンガを数多く描いてきた日本マンガ界の重鎮・ちばてつや先生。練馬区内にお住いになり、創作活動を続けていらっしゃいます。練馬区を選んだ理由は、出版社の方に薦められたことと手塚治虫さんなどマンガ家の先輩が数多く住んでいたことも大きかったそうです。自然が多く残っていることも気に入って、もう50年以上も区内で活動されています。
そんなちば先生の代表作の一つ「あしたのジョー」を題材にした展覧会「あしたのジョー、の時代展」が、7月20日(日)より練馬区立美術館で開催されます。
この展覧会の実施にさきがけ、執筆当時の思い出など、いろいろなお話をうかがってきました!

「ある少年の充実した生き様」を、信念を持って描き続ける!

  • −−「あしたのジョー」という作品について、描いていた当時はどういう時代だったのか、その印象と思い出などをお聞かせください。
  • 「あしたのジョー」を描く前は「ハリスの旋風」という作品を描いていたんですが、その最後のほうでボクシングの場面が出てきて、その為に取材をしているうちに、この世界で描けそうだな、という予感はしていました。それでジョーを描き始めたんですけど、あのころはまだ戦後を引きずっていて、戦争の傷跡もまだあちこちに残っていたんですね。でも、高度成長期で景気もよくなって、だんだん日本中が元気になってきてはいました。そういう活気のある時代を、なんとなく肌で感じながら「あしたのジョー」を描いていた、という記憶はありますね。
    私はそのころマンガ家になって17〜18年目で、「あしたのジョー」を描き始めたときは疲れがピークに達してましてね。不規則な生活をしていたこともあって、体調が悪くなって連載を休載したり、入院してしまったり。そんな感じでしたね。
  • −−「あしたのジョー」自体は、当時の大学生に受け入れられたりして、時代と密接にかかわっていた印象が強いと思います。先生はこのことをどうお感じになられていましたか?
  • 連載していたのが「少年マガジン」という雑誌ですから、読んでいる人は少年たちばっかりだと思っていたんです。だから主人公も、年齢をはっきり定めてはいないんですけど、中学生とか高校生くらいの少年ですしね。それが、成長していく過程を描いていくうちに、だんだん少年から青年に変わっていったんですね。ただ、世間がこういう時代だから、といってそれに合わせて作品を描いた記憶はあまりないんです。
    ちょうど、マンガ雑誌を高校生とか大学生とかサラリーマンまで読むようになった、そういう時代に重なったんですね。「電車のなかでいい大人がマンガを読んでる」、と社会問題になったりして。そういうなかで「少年マガジン」の内容もすごく大人っぽくなっていって。大人が読んでも難しいような哲学的な話をマンガにしたりね。「右手に少年マガジン、左手に朝日ジャーナル」とかいわれて。そういう時代と重なったので、ジョーもどんどん大人になっていったんでしょうね。
    原作の梶原一騎さん(注1)も大泉に住んでいらしたので、よく行き来して打ち合わせもしましたけど、梶原さん自身もそういうことを感じながら書いていたと思うんです。私はどちらかというと明るい元気な少年しか描いていなかったんですけど、梶原さんは格闘技に生きる男たち、だけでなく闇社会で生きる男たちや、裏でうごめいている人間も書かれる方でしたから、そういった雰囲気をジョーでも盛り込んでくれて、私はそれを必死で咀嚼しながら「少年マガジン」という雑誌に描いていく、という感じでした。だから、大人が読んでもおもしろい、男の生き様みたいなものも表現できたんじゃないかと思います。
    学生運動などの話は、描いている途中で新聞やニュースなどから小耳にはさんではいました。でもやっぱり私は「少年マガジン」なんだから、読んでるのは少年たちだというのを忘れないように描いていました。あまりにも社会のことを気にしながら描くと、やっぱり軸がぶれてしまうので。私はできるだけ最初の指針、信念を曲げないように、ぶれないように、ある少年の充実した生き様を徹底して描こうと、そういう気持ちで描いていました。

アニメーションの監督と作品を通して会話する!

  • −−「あしたのジョー」は二度にわたってテレビアニメ化されましたが、どのような感触を持たれましたか?
  • その前の「ハリスの旋風」のアニメのときに、はじめて自分のキャラクターがテレビで活躍すると聞いてすごく期待していたんですよ。でも、原作マンガが脚本家にバラバラに渡されたので、キャラクターに統一性がなくてね。それにテレビアニメだとストーリー展開が早いので、私が三か月くらいかかって描いた話がテレビだと1回で終わっちゃうんですよね。だから「あしたのジョー」のときは、アニメはまったく別の世界だと思ってできるだけ見ないようにしていました。ただ、どうしても気になるのでときどき覗くと、私のキャラクターがさらに大人っぽくなっていたり、雰囲気に社会性があるというかな、時代を反映していきいきと描かれているので「あぁ、私のマンガにはない、また全然別の世界ができているなぁ」というのは感じていました。特に出崎統監督(注2)は、全く違う新しい「あしたのジョー」をつくってくれたんじゃないかと思いましたね。
    出崎監督とは、いちばん最初に打ち合わせをして、その後も何度かお会いしました。監督とは、作品を通じて会話をしていましたね。アニメは2つにわかれましたけど、それは最初のアニメのときにマンガの連載に追いつかれちゃったからなんです。だから「あしたのジョー2」までちょっと間があいたんですけど、その間に出崎さん自身が成熟したんでしょうね。ガラッと雰囲気が変わって。間の取り方とかね。あと止め絵で光だけがスーッと動いたり、そういう演出がいっぱいちりばめられていて、これはすごいなと思いました。マンガではできない新しい表現をアニメーションに取り入れているなぁ、というのをすごく感じましたね。
  • −−アニメの声についてはどうお感じになりましたか?
  • キャラクターの声は、自分の頭のなかでだいたいイメージができているんですね。だから違和感を感じることもあるんだけど、「あしたのジョー」のときは最初からしっくりきましたね。矢吹丈役のあおい輝彦さんもそうだったし、丹下段平役の藤岡重慶さんもほんとに段平になりきっていて。会ってみたら本当に段平みたいな方でね(笑)。非常に適役だったと思います。あと、檀ふみさんの白木葉子役(注:劇場版アニメ)も印象に残っていますね。

地元の美術館、初のマンガ展示。ぜひ見に来てください。

  • --「あしたのジョー、の時代展」の開催について、率直な感想をお聞かせいただけますか。
  • 原画展といえば昔は、デパートの催事場どころか地下食品売り場の隅っこでやったりしてましたからね。そこに寺山修司さん(注3)に来てもらって対談したこともあるんですよ。ファンの方々がたくさん見に来てくれてぎっしりだったんだけど、すごく狭くてね。
    それがいまでは美術館ですからね。
    マンガの原画って小さいから、展示するのはなかなか難しいんですよね。ときには拡大して大きく見せてもらったりしないといけない。そういう意味では新しい試みかなと思うんですよね。私の地元の美術館で、しかもはじめてマンガを展示するということですから、私も半分ビクビク、半分期待しながら楽しみにしています。ぜひみなさんも来てください。

注1:マンガ原作者。「あしたのジョー」の原作者である高森朝雄は梶原一騎の別名。代表作は「巨人の星」「愛と誠」など。

注2:アニメ監督。独特の演出でアニメの新境地を開いた。代表作は「エースをねらえ!」「ブラックジャック」シリーズなど。

注3:詩人・劇作家。劇団「天井桟敷」主宰。力石徹の葬儀で葬儀委員長を務め、アニメ「あしたのジョー」では主題歌の作詞も担当した。

©高森朝雄・ちばてつや/講談社

あしたのジョー、の時代展

「あしたのジョー」の作品世界を、100点以上におよぶ原画によって構成し、アニメやレコードなど同時代の関連資料から作品の広がりを紹介します。また、寺山修司や土方巽など、ジョーと同じ時代を生きた芸術家たちの活動をたどり、その時代を振り返ります。会期中のイベントも多数開催されます。

【会期】平成26年7月20日(日曜)〜9月21日(日曜)
【休館日】月曜日(ただし、7月21日、9月15日【月・祝】は開館、翌日休館)
【開館時間】午前10時〜午後6時※入館は午後5時30分まで
【観覧料】一般500円、高大学生及び65〜74歳300円、中学生以下及び75歳以上無料(その他各種割引有)
あしたのジョー、の時代展(練馬区公式ホームページ)
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