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練馬ほっと・キャスト 特別企画 練馬にいた! アニメの巨人たち

練馬区ゆかりのアニメクリエイターと、その作品の魅力を探る練馬アニメーションサイト新企画「練馬にいた!アニメの巨人たち」。
アニメ研究家の氷川竜介さんとアニメ史研究家の原口正宏さんが、そのクリエイターの魅力についてたっぷり語ります。

  • アニメ研究家 氷川竜介さん
  • アニメ史研究家 原口正宏さん

第4回 片渕須直さん(アニメーション映画監督)その4

  • 片渕須直さん(アニメーション映画監督)
  • ©こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

今回も引き続き、アニメーション映画監督・片渕須直さんを取り上げます。
第1回はこちら
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片渕須直監督は、現在も大ヒット上映中の映画『この世界の片隅に』の監督です。片渕さんは練馬区にある日本大学芸術学部の出身で、現在も同校の講師として後進の指導にもあたられています。
片渕監督篇は今回が最終回です。

片渕須直監督プロフィール

アニメーション映画監督。1960年生まれ。日大芸術学部映画学科在学中から宮崎駿監督作品「名探偵ホームズ」に脚本家として参加。『魔女の宅急便』(89/宮崎駿監督)では演出補を務めた。T Vシリーズ「名犬ラッシー」(96)で監督デビュー。その後、長編『アリーテ姫』(01)を監督。TVシリーズ「BLACK LAGOON」(06)の監督・シリーズ構成・脚本。2009年には昭和30年代の山口県防府市に暮らす少女・新子の物語を描いた『マイマイ新子と千年の魔法』を監督。口コミで評判が広がり、異例のロングラン上映とアンコール上映を達成した。またNHKの復興支援ソング『花は咲く』のアニメ版(13/キャラクターデザイン:こうの史代)の監督も務めている。

※以下の画像と解説をご覧になりながらお聞きください。
また、今回の内容には、紹介する作品のネタバレも含みます。ご注意ください。

収録のようすと用語解説

片渕監督の存在を決定づけた作品
■ 『アリーテ姫』
STUDIO 4℃が制作した、2001年公開の劇場用アニメ映画。片渕須直監督の、長編映画監督デビュー作。城の塔の中で育てられたアリーテ姫と、彼女を連れ去る魔法使い・ボックスの物語。想像力を働かせる少女が主役という点で、後の『マイマイ新子と千年の魔法』や『この世界の片隅に』にも繋がりを感じられる。2000年の東京国際ファンタスティック映画祭ではじめて上映された。原作:ダイアナ・コールス、監督・脚本:片渕須直
■ 『魔女の宅急便』
スタジオジブリが制作した、1989年公開の劇場用アニメーション映画。制作当初は片渕須直氏が監督する予定だったが、諸事情により宮崎駿氏が監督を務めることとなり、片渕氏は演出補佐へ回った。監督:宮崎駿、作画監督:大塚伸治、近藤勝也、近藤喜文、演出補佐:片渕須直
■ 『マイマイ新子と千年の魔法』

片渕監督の長篇アニメーション2作目。2009年公開。芥川賞作家・髙樹のぶ子の自伝的小説「マイマイ新子」が原作。昭和30年の山口県防府市を舞台に、空想好きで多感な少女・新子の日常を、東京から来た転校生・貴伊子や仲間たちとの交友を軸に描く。『この世界の片隅に』と共通する部分も多く、片渕監督自身が〈姉妹作〉と語っている。『この世界の片隅に』の大ヒットを受け、各地で再上映が行われている。
DVD&Blu-ray発売中
発売・販売元:エイベックス・ピクチャーズ
©髙樹のぶ子・マガジンハウス/「マイマイ新子」製作委員会
http://www.mai-mai.jp/discography/

■ 高畑・宮崎
高畑 勲(たかはた いさお)氏と、宮崎 駿(みやざき はやお)氏のこと。
■ ジブリ
スタジオジブリのこと。『天空の城ラピュタ』制作時の1985年に、『風の谷のナウシカ』を製作した出版社・徳間書店が中心となり設立したアニメーション・スタジオ。以後、宮崎駿・高畑勲両監督の劇場用アニメ映画を中心に制作してきた。当初は作品ごとにスタッフを集め、完成と共に解散する従来の制作会社のスタイルだったが、後に人材育成のためにアニメーターを正社員化・固定給制にするなど、高品質で安定した作品作りの拠点となった。
■ 東映動画(現・東映アニメーション)
1956年に練馬区大泉に設立された、60年の歴史を持つアニメーション制作会社。当初の制作体制は、「動きで表現することを大事にする」ことを特徴とした劇場作品を、1年間に1本のペースで製作・公開することを目標としていた。1963年からはTVアニメの制作もスタート。以降現在に至るまで、「ドラゴンボール」シリーズ、「デジモンシリーズ」、「ONE PIECEシリーズ」、「プリキュア」シリーズなど、数多くの劇場作品、TVシリーズを発表し続けている。その設立から初期のスタッフについては、当サイト《練馬のアニメスタジオの遺伝子 東映動画編》で詳しく紹介。
■ 名作劇場
世界名作劇場のこと。かつて日本アニメーションが制作していたテレビアニメシリーズの呼称。世界中で親しまれてきた小説・童話などを原作として、ファミリー向けに脚色をしてアニメ化されている。〈世界名作劇場〉という表記になったのは1979年放送の「赤毛のアン」からで、それまでは〈カルピスこども劇場〉や〈カルピスファミリー劇場〉という表記だった。
■ 『君の名は。』
アニメーション作家・映画監督の新海誠(しんかい まこと)氏が監督した、2016年8月公開の劇場用アニメ映画。公開13週目までに、週末動員数1位を12回獲得。12月には興行収入200億円を突破し、宮崎駿監督の『もののけ姫』と『ハウルの動く城』を超え、日本における歴代興行収入ランキング5位(日本映画では2位)となっている。 監督・原作・脚本・絵コンテ・編集・撮影:新海誠、キャラクターデザイン・オープニング作画監督・オープニング原画:田中将賀、作画監督・キャラクターデザイン:安藤雅司、作画監督:井上鋭、土屋堅一、廣田俊輔、黄瀬和哉
■ 聲の形
『映画 聲の形』のこと。京都アニメーションが制作した、2016年公開の劇場用アニメ映画。週刊少年マガジンに連載され、「このマンガがすごい!」や「マンガ大賞」などで高い評価を受けた大今良時のマンガ「聲の形」が原作。ひとりの少年と先天性の聴覚障害を持つ少女の物語。原作:大今良時「聲の形」、監督:山田尚子、キャラクターデザイン・総作画監督:西屋太志
■ 細田 守(ほそだ まもる)
アニメーター、アニメ監督。1991年に東映動画(現・東映アニメーション)に入社し、アニメーターとしてキャリアをスタートさせる。1996年に社内で演出採用試験が初めて実施されこれに合格。翌年、TVアニメ「ゲゲゲの鬼太郎(第4シリーズ)」(96~98)で演出家としてデビューした。1999年には短編アニメ映画『劇場版デジモンアドベンチャー』の監督に抜擢、2000年の『劇場版デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』で注目を集める。東映アニメーションを退社後フリーとなり、マッドハウス(当時)の丸山正雄氏の勧めにより『時をかける少女』(06)を監督し大ヒット。国内外の映画・アニメ賞など23冠を受賞した。2011年にアニメーション映画制作会社〈スタジオ地図〉を設立。『おおかみこどもの雨と雪』(11)、『バケモノの子』(15)とヒット作を生み出し続けている。
■ 『時をかける少女』
細田守監督による劇場用アニメ映画。2006年公開。アニメーション制作はマッドハウスが担当した。筒井康隆氏の小説「時をかける少女」が原作であるが、原作の出来事から約20年後を舞台とした物語となっている。監督:細田守、キャラクターデザイン:貞本義行、作画監督:青山浩行、久保田誓、石浜真史
■ 聖地巡礼
宗教において重要な意味を持つ〈聖地〉へ赴くことを〈巡礼〉という。ここから転じて、アニメや映画、ドラマ、漫画・小説などの舞台となった場所を〈聖地〉とし、そこへ実際に訪れることを〈聖地巡礼〉と呼ぶようになった。作品によっては、公式に〈聖地〉を紹介する「ロケ地マップ」が作られるケースもある。
■ クラウドファンディング
特定のプロジェクトまたはベンチャーなどの資金調達をするために、インターネットを利用し、多くの人々から寄付や投資を集めること。『この世界の片隅に』では、パイロットフィルムを制作する為の資金調達に活用された。
片渕監督に期待する今後のチャレンジ
■ 戦時中の戦闘機の調査
片渕須直監督は、航空史の研究家としても知られる。特に第二次世界大戦期の日本の航空機メーカー史、航空機用塗料について造詣が深い。航空ジャーナリスト協会会員でもある。
■ 零戦(ぜろせん)
第二次世界大戦期の日本海軍の主力艦上戦闘機である零式艦上戦闘機(れいしきかんじょうせんとうき)のこと。通称として、零戦(ぜろせん、れいせん)と呼ばれる。
■ 空襲
航空機により、空中から地上・海上などの目標に対して行われる攻撃のこと。
■ シネカリ
フィルムで制作される映像作品の技法のこと。フィルムに直接針などでイメージを描き(傷つけ)、アニメーションとして動かす技法。『この世界の片隅に』の劇中には、このシネカリをイメージした作画が行われたシーンがある。
■ 中割り
アニメーションの制作において、原画と原画の間を繋ぐ中間の絵のことを指す。中割りの枚数を増やすことで、動きの滑らかさが増す。アニメ制作の現場では動画マンがこの工程を担当する。
■ 『哀しみのベラドンナ』
虫プロダクション(旧)が制作した、1973年公開の劇場用アニメ映画。「大人のためのアニメーション」と銘打った〈アニメラマ〉シリーズの3作目。中世フランスの農村を舞台に、愛する夫のために悪魔と契約した女性・ジャンヌの哀しい物語。映像的には、挿絵画家の深井国氏をフィーチャーし、氏のイラストのイメージで全編を制作。セル画のテイストを極力排除。静止画、イラストのアニメート、グラスペイント、サイケなグラフィックアニメなど、タッチや画風の異なる複数の映像表現が、物語の流れのなかに唐突に混入するという実験的なスタイルが採られている。原作:ジュール・ミシュレ(翻訳/篠田浩一郎、現代思潮社刊『魔女』より)、企画構成・監督:山本暎一、作画監督:杉井ギサブロー
■ 今 敏(こん さとし)
漫画家・アニメーター・アニメ監督。1985年、武蔵野美術大学在学中に『カーヴ』で漫画家デビュー。影響を受けていた大友克洋氏のアシスタントも務める。1990年、大友克洋氏が原作・脚本・メカデザインを担当した劇場用アニメ映画『老人Z』で、美術設定としてアニメ制作に初参加。以後『機動警察パトレイバー2 the Movie』(93)、「ジョジョの奇妙な冒険(OVA)」(93~94)、『MEMORISE(3話オムニバスの1篇「彼女の想いで」)』(95)、などの作品にアニメーターとして関わる。1998年に初監督作品となる劇場用アニメ映画『PERFECT BLUE』が公開され国内外で大きく評価された。その後『千年女優』(02)、『東京ゴッドファーザーズ』(03)が続けて公開される。2004年には初TV作品「妄想代理人」の総監督を務めた。2006年、念願だった筒井康隆原作の映画『パプリカ』を発表する。次回作として『夢みる機械』の制作に取りかかるが、2010年8月24日に膵臓癌の為永眠。享年46歳。
■ 『千年女優』
今 敏監督が原案・脚本・キャラクターデザインも務めた2002年公開の劇場用アニメ映画2作目。アニメーション制作はマッドハウス。かつて一世を風靡し、忽然と姿を消した大女優・藤原千代子。30年後、ドキュメンタリー番組のカメラの前に現れた彼女は、あることをきっかけに昔を語りはじめる。本作には、『この世界の片隅に』と同じく、丸山正雄氏が企画を、真木太郎氏がプロデユーサーを務めている。原案・脚本・キャラクターデザイン・監督:今敏、作画監督:井上俊之、濱洲英喜、小西賢一、古屋勝悟 ※当サイトでは、2015年に行われたトークイベント《いま再び 今 敏監督を語り合おうー『千年女優』編》レポートを掲載しています。
■ グループえびせん
アニメーションの自主制作グループ。片山雅博氏、はらひろし氏、角銅博之氏、飯田馬之介氏、ふくやまけいこ氏、山村浩二氏など、後にアニメ業界で活躍するメンバーが参加していた。片渕須直監督も大学在学時にメンバーとして活動していた。
■ マクラーレン
カナダの実験映像、アニメーション作家である、ノーマン・マクラーレン氏のこと。ダイレクトペイント、マイクレス録音、ピクシレーション、カリグラフィ、立体アニメーション、多重露光映画など、数々の実験的手法を用いた作品を発表。世界中のクリエイターに影響をあたえた。
■ 『MEMORIES』
大友克洋氏(後述)が総監督を務めた1995年公開の劇場用アニメ映画。森本晃司監督「彼女の想いで」、岡村天斎監督「最臭兵器」、大友克洋監督「大砲の街」の3話からなるオムニバス形式の作品。
■ 「大砲の街」
上記の映画『MEMORIES』の3話目にあたる。大友克洋氏自らが、監督・原作・脚本・キャラクター原案・美術をつとめた。大砲を撃つためだけに作られた街の、とある一日を描いた作品。全編20分を1カットのみで構成した異色作。片渕須直氏が技術設計として参加している。アニメーション制作はスタジオ4℃が担当した。監督・原作・脚本・キャラクター原案・美術:大友克洋、キャラクターデザイン・作画監督:小原秀一、技術設計:片渕須直
■ 大友 克洋(おおとも かつひろ)
漫画家、映画監督。1973年に漫画アクション掲載の短篇「銃声」で、マンガ家としてデビュー。代表作に「童夢」(80~81)、「AKIRA」(82~90)など。緻密な描き込みや複雑なパースを持つ画面構成などの作風は、世界中のクリエイターに大きな影響を与えた。1988年には自らが監督を務める劇場用アニメ映画『AKIRA』を制作。国内外で高い評価を得た。その後は、『MEMORIES』(総監督/95)、『スチームボーイ』(04) 、『蟲師』(実写映画/07)など、アニメや実写など映像作品で活躍している。
■ 「母をたずねて三千里」
1976年にTVアニメシリーズ《世界名作劇場》の2作目として日本アニメーションが制作。原作は、イタリア文学の古典であるエドモンド・デ・アミーチスの「クオーレ」の挿入話”Dagli Appennini alle Ande”(アペニン山脈からアンデス山脈まで)。主人公は、イタリア・ジェノヴァに住む少年・マルコ。アルゼンチンに出稼ぎに行ったきり音信不通になった母を探す旅に出たマルコが、道中で出会った多くの人に助けられ、その優しさに触れながら成長していく物語。第21話「ラプラタ川は銀の川」では、アルゼンチンに到着する直前の船上で、マルコが「母は自分を憶えていてくれるだろうか?」と葛藤する姿が描かれている。原作:エドモンド・デ・アミーチス、監督:高畑勲、キャラクターデザイン・作画監督:小田部羊一、場面設定・レイアウト:宮崎駿
■ アヴァンギャルド(avant-garde)
フランス語で〈前衛部隊〉を指す軍事用語だったが、芸術の分野で〈前衛的〉傾向に対して使われるようになった。主にシュールレアリズムや抽象芸術などのような、伝統的な芸術の価値観と反する傾向を指す。シュールレアリズムの〈シュール〉と同じように、「非現実的、現実離れ」といったニュアンスで使われる場合もある。
■ ホルス

東映動画(現・東映アニメーション)が制作した1968年公開の劇場用アニメ映画『太陽の王子ホルスの大冒険』のこと。監督:高畑勲、作画監督:大塚康生、場面設計・美術設計:宮崎駿
『太陽の王子 ホルスの大冒険』
DVD&Blu-ray発売中
発売元:東映ビデオ
販売元:東映

©東映
http://shop.toei-video.co.jp/

■ 緑のコジロー
『マイマイ新子と千年の魔法』で、主人公・新子が想像するキャラクター。新子曰く、「刀を背負うて水の上を走る人」。
まとめ
■ 機銃掃射のシーン


こうの史代著「この世界の片隅に」下巻P66-67(双葉社)

機関銃や機関砲を使用して、地上または海上の目標をなぎ払うように射撃すること。『この世界の片隅に』では、戦闘機が機銃掃射を行うシーンがある。

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